この3日ほど、ずっとデスクワークは『愛染帖』。応募253名の750句余りを厳選。選評などパソコン入力完了。本日午後、川柳塔社事務所宛発送完了。
今回のは、12月号に発表のためアップできず。10月号に掲載済みの内ベスト10をご紹介。
【愛染帖】 川柳塔誌10月号掲載分より、ベスト10。
地下鉄に乗りに行くのも呆けぬため 和歌山県 森下よりこ
(評)閉じこもってテレビ漬けでは呆けてくる。切符を求め自動改札を通り、電車に乗り、乗客を観察する。これだけで頭の体操になる。
腹時計サマータイムになっている 三田市 堀 正和
(評)サマータイムに賛成も反対も、それぞれ言い分はあるが、そのような理屈を超えて、健康な腹時計は太陽が顔を出すと「グ~~」。
硝煙の臭いは花火だけでいい 米子市 後藤美恵子
(評)花火の音と光と臭いから焼夷弾を思い出す年代も少なくなってきた。爆薬を発明したノーベルも平和利用だけを念じている。
不意の客お待ちください服着ます 河内長野市 谷 久美子
(評)先日、ご近所へ届け物をしたとき、同じ状況に遭遇した。しばらくして出てきた奥様のTシャツ、肩のあたりが引き攣れていた。
歳の順なら次はダンナだナムアミダ 橿原市 安土 理恵
(評)ナムアミダと拝まれてはオチオチ生きていられないが、こればっかりは順番と参らぬ。反対に、拝まれる立場になるかも…。
おめおめと龍馬の倍も生きている 藤井寺市 鈴木いさお
(評)久坂玄瑞二十五歳。高杉晋作二十八歳。吉田松陰三十歳。坂本龍馬三十三歳、など等。彼らの倍以上生きているのではあるが…。
選手宣誓元気良すぎて聞き取れぬ 堺 市 矢倉 五月
(評)旧態依然の頑固者に指導されているのか、独特の抑揚と怒鳴り声の選手宣誓。意味よりも「元気」を誇示しているのだろう。
愛犬家犬に実権握られる 姫路市 古川 奮水
(評)起きる時間も犬の鳴き声で。散歩も食事も犬の要求通り。犬の顔色を窺いながら犬が最優先の毎日。愛犬家はそれで満足なのだ。
焼肉パーティー盆の仏も目をつむる 美作市 小林 妻子
(評)ご先祖も子供たちも帰郷してくる盆。ご先祖には胡瓜と茄子。子供たちには焼肉。殺生を嫌う仏様も「仕方がないか…」。
幽霊もかぞえてました長寿国 西宮市 緒方美津子
(評)年金目当てに死んだのを隠しているなら言語道断。どこかで無縁仏となっているなら哀しすぎる。繁栄の陰、都会の死角にひそんでいた暗部。行政上の大問題である。