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最近「抗体カクテル」を耳にすることが多くなった。最初に聞いたのはトランプ元大統領のコロナ感染治療で使用された時、「へえ~、人に投与できる抗体医薬品があるんだ、偉い人には高価な薬も使うんだ。」と感心していた。会社勤めの頃、別の研究室で「モノクローナル抗体」を診断薬用として開発していた。癌に特異的に働く抗体で我々はそれに薬を付けて「ミサイル療法薬」を研究したこともあった。その頃はマウスの腹水で作るマウス型抗体でアナフラキシーの恐れから人には投与は出来なかった。トランプ元大統領の話を聞いた時は「へえ~、ヒト型のモノクロ出来たんだ」と驚いたものだ。ヒト型の抗体は多分遺伝子操作技術で作られているのだろう。

菅総理は会見で簡単に抗体カクテルを使えるようなことを仰っているが、抗体カクテルについての詳しい説明は聞かれない。そこで自分なりに調べて説明してみようと思う。カクテルというから飲み物を連想するが、2種類のモノクローナル抗体のカクテルは商品名「ロナプリーブ」という。以下はネット情報!

「今回緊急承認されたロナプリーブは単一成分の薬ではない。医薬品として使用するため人工的に製造した抗体は別名「抗体医薬品」と呼ばれるが、ロナプリーブはカシリビマブ、イムデビマブと呼ばれる2種類の抗体医薬品が含まれる注射薬である。複数の抗体医薬品で行う治療であることから、酒やジュースなど複数の飲料を混ぜて作られるカクテルになぞらえて、この薬を使う治療法は「抗体カクテル療法」と呼ばれる。

そもそもこの抗体はアメリカの製薬企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ社が最初に作り出したもので、現在売上高で世界第1位の製薬企業であるスイス・ロシュ社が同社と提携して獲得。ロシュ社の子会社である中外製薬が日本国内での開発・販売ライセンスを取得していた。ちなみに中外製薬は1925年創業の日本の製薬企業だったが、2002年にロシュ社が過半数の株式を取得し、同社のグループ会社になっている。

ただ、ロナプリーブとワクチンの中和抗体には違いがある。ロナプリーブの中和抗体は感染判明後、静脈に点滴で注射するオンデマンド方式で、それを止めれば抗体は無くなるのに対し、ワクチンの場合はいったん基本スケジュール通りに接種が完了すればその後一定期間はウイルスの体内侵入に合わせて体内で自動的に中和抗体が製造されるオートメーション方式である点だ。

ただ、一般的に抗体医薬品は高薬価である。既存の抗体医薬品はおおむね1回の注射で安くても2万~3万円、高いものでは10数万円はかかる。ロナプリーブの場合は2種類の抗体医薬品の組み合わせなので1回4万円以上は念頭に置く必要がある。これで対象患者が多くなればなるほど国の財政負担は激増する。

ちなみに前述のようにこの薬剤がウイルスの中和抗体であり、家族内感染の発症予防効果もあることから「ワクチンではなくロナプリーブを使えば良い」という意見も出てくるかもしれないので、念のためにそれについて答えておくと、医学的にも財政的にも現実的ではない。

ロナプリーブで判明している家族内感染予防効果は1回の注射で1カ月ほど。この原理に従えば確実な予防のためには、毎月注射しなければならないことになる。ワクチンが2回の接種で少なくとも半年以上、おおよそ1年程度は感染予防効果があると考えられていることからすると、医学的に見てパフォーマンスが悪い。接種する患者側の苦痛に関して言及しても、年間12回注射の針を刺されるのと、2回で済むのとどちらが良いかの答えはほぼ自明だ。また、コストに関してもワクチンは2回の接種で4000円程度。ロナプリープは前述のように1回で4万円以上かかることは確実。現在のワクチン接種対象者は約1億1000万人になるので仮にこれら全員に使うとしたら、ワクチンならば年間4400億円、ロナプリープならば年間53兆円の財源が必要になる。これは日本の国の年間予算(一般会計歳出)の半分に相当する。きわめて非現実的と言わざるをえない。

治療薬としてはこれまでの中でも比較的画期性は高いと言えるし、治療選択肢が増えたことは歓迎すべきことだ。しかし、限定された投与対象、煩雑な注射薬、高額なコストがかかる抗体医薬品という現実を考えれば決定打とはいえない。また、今後の治療薬開発なのでより簡便かつ安価な経口薬が登場した場合は瞬く間に取って代わられる可能性がある。」

いかに菅総理の発言が軽いものか分かってしまう。いとも簡単に「感染したら抗体カクテルがありますよ」と言うと持続性の効果があるワクチンを打つ人が少なくなる可能性がある。国の財政を破綻しても良いと思っていらっしゃるのなら別だが…。専門家の詳しい説明が必要!

抗体のカクテル飲んでみませんか   潤



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