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番傘誌2月号の「リレー放談」欄に拙文が掲載されましたので紹介致します、番傘誌のPRもかねて…。

「 私が川柳を始めたきっかけは平成十年の口腔系の癌での手術・放射線治療の三か月間の入院生活でした。気晴らしに日々の病院生活を詠んでいました。今では多くの吟社さんにお世話になっていますが、最初に入ったのは番傘系の「東京みなと番傘」でした。平成十三年の「港」に「道頓堀の雨に別れて以来なり 雑感」としてそのいきさつを書いていますので紹介致します。

三年前の闘病生活の日々、下手な川柳を作って気を紛らわせていました。そんなある日新聞の広告欄に田辺聖子著『道頓堀の雨に別れて以来なり(上)(下)』を見つけ川柳も勉強しなくてはと家内に買ってくるように頼みました。しばらくして届いた本は分厚くしかも(下)しかありませんでした。「岸本水府って誰だろう?分厚くって読みにくい本だなあ」とパラパラと読んだ後は別の本の下敷きになっていました。退院後ひょんなことで川柳風に綴った闘病記を出版することになり、タイトルを決める段になって『道頓堀の…』を思い出しました。拙著『雷が病院入りを囃し立て』は田辺聖子さんのアイディアを勝手に頂いたものなのです。

拙著の縁で藤田峰石さんを知り「港」に入会させて頂き句会にも参加するようになりました。しかし句会の合間の吟一さんのお話を聞いていても「誰だろうこの人」というノー天気ぶり、「そういえば吟一さんの岸本というのはどこかで聞いたことがあるぞ!」と気付いたのはこの五月のことでした。本棚の奥から(上)(下)を取り出して読み始めました。驚きました。生まれて初めて偶然手にした本が入会している「番傘」創始者の岸本水府さんに関する著書だったのですから。そこには「大正ロマンの世界」が広がっていました。番傘創立期に活躍した岸本水府さん、小田夢路さんら多くの川柳家のみなさん、そして現代に生きるご子息の吟一さん(故人)、番傘本社の磯野いさむさん、森中惠美子さん、田頭良子さんらの若き日のお姿も垣間見ることが出来ました。

恋せよと薄桃色の花が咲く         水府

やかましう言ふなと牛が歩き出し      夢路

青春は朱にまじわりて悔いもなし      吟一

よき父母と〚みやまきりしま〛ある書棚   いさむ

足袋ぬいで女酔うてるわけを云い      惠美子

いじめ甲斐ある人をまつ胡瓜もみ      良子

大先輩の方々の句を勝手に選ぶとは随分と僭越なことをしたかもしれません。仕事がら文献や資料を漁って読むのが好きなものですからお許し下さい。それにしても田辺聖子さんの収集された資料は莫大なものがありました。しばらく前の「港」の句会で吟一さんに本書のことをお話ししましたところ、「田辺聖子さんはスゴイですよ、私の知らない母のことも調べてあの本に出しているんですよ」とおっしゃっていました。本書は川柳以外にも大正から昭和期の人々の生きざまや生活を教えてくれます。特に川柳家たちの人間的なふれあいは楽しく読ませていただきました。振り返って自分の日常をみれば他人との新鮮なふれあいは無くフラスコとふれあう毎日、これじゃあいい句が出来ない訳です。本書の後半に「週刊朝日」の連載で徳川夢声と対談する場面があります。訳知り顔の夢声が川柳の奥深さを語る水府にたじたじとなる場面には留飲をさげました。 森中惠美子さんと言えば津山に育った若手新人として登場されています。二十一、二才の頃の惠美子さんは大きな体躯で童顔にあふれる笑いの好奇心旺盛な娘さんだったことがうかがわれます。それから五十年、番傘川柳の真髄を継承されてこられたことでしょう。先日、耕一さんや蓉子さんのお勧めもあって番傘本社の誌友にさせていただきました。毎月近詠を作るのは苦行に近いものがありますが、こうすけさんの「森中惠美子さんの選を受けられるのは幸せなことです」のお言葉に発奮しています。

最後に本書で私が一番笑った句をひとつ。

これほどの腹立ちに女「堪忍え」    緑天

この文章を書いてから十六年、同人に推挙頂き、同人巻頭に二度選ばれるという栄誉も頂きました。しかし、番傘川柳はどうしても身近にはありません。その訳はここ北関東には番傘の結社がひとつもないのです。昨年の番傘誌十一月号の同人近詠から作者の皆さんの現在地を統計してみますと、同人約五百五十名のうち、大阪府八十一名、奈良県六十四名、広島県四十一名、福井県三十五名、愛知県三十一名と続きます。群馬県は私ただひとり、誌友の方々を合わせても数名にしかなりません。お隣の栃木県も同じような状態です。北関東は番傘川柳不毛の地なんでしょうか、「空っ風番傘」でも立ち上げようとしても寒い風が吹きすさぶばかりでどうにもなりません。

そこで近年はSNSで川柳を発信しています。最初は「趣味人倶楽部」というサイトでブログと句会を行っていましたが、昨年の七月からは新葉館出版さんの川柳マガジン作家ブログでもうひとつの趣味の写真と合わせて紹介させて頂いています。こんなことででも川柳に興味を持つ人が少しでも増えればと思っていますが、「空っ風番傘」の創立は夢のまた夢といったところです。」



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番傘”にコメントをどうぞ

  1. 江畑 哲男 on 2018年2月22日 at 8:40 AM :

    『番傘』2月号、読みましたよ~っ!!!
    「空っ風吟社」、ぜひ立ち上げて下さい。

  2. on 2018年2月23日 at 8:34 AM :

    哲男さま

    「空っ風吟社」まず無理です(涙)

    みなさまのご活躍を指をくわえてながめております。

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