忘れん坊将軍ならばすぐなれる
☝ 作者近影、掲載をお許し済み
あちこちチャンネルを替えてみたが、暴れん坊将軍で止めた。とくに観たいわけではないが、この種の番組は安心して見ていられるからだ。なにが安心かといって、主人公が殺される気遣いがない。途中から見ていても、およそ筋の見当はつくし、いつでもトイレに立てるし、結末を観なくてもそれほど後悔しなくても済む。だから、手に汗握ることもなく、ボッーと観ているうちに、
「ああ、ぼくは暴れん坊でないし 、あんなに腕も立たない。鍋の前で奉行になることはあっても、将軍の柄でもない。なれたとしても、忘れん坊の将軍だろうか。あっ、これ川マガ東京にでも出してみるか」
といった塩梅で出来た句であろう。「最近の物忘れに対する自嘲の句」なんてのは後付けの副産物である。暴れん坊をあれこれ捻って、あまえん坊・あわてん坊・いやしん坊・くいしん坊・さみしん坊などと並べた揚句に「忘れん坊」に落ち着いた創作句でもなかろう。
互選の参加者が評価したように「すぐなれる」が、たまらなく良い。「忘れん坊」はすでになっているのだから、「すぐになれる」のは「将軍」であろう。
と、思ったのだけれども、違ったら御免なさい。
例会の時、この句に出会い、テレビの「暴れん坊将軍」とだぶり、「いいなぁ!巧いなぁ、忘れん坊将軍か」「すぐなれるか」・・・ついニヤリとしました。このところ忘れ物や探し物が増え、どっこいしょと座り込んでしまう日々でした。