母さんと呼び合っている母と妻
名前こそ「よし子」と「芳江」で似ていたが、血液型はO型とB型、決断の早い母と様子見の妻は正反対の性格に見えた。そんな二人の妙な一致点は、耳の大病で難手術を受けた経験。「同病相憐れむ」とはよく言ったもので、正反対の性格を認め合い諦めあう関係になり、近隣の人々の眼にも本当の母娘に映じたようだ。
杏子でありっこさもない
「これが杏子でありっこ、梅に決まっとる」と母。「たかちゃんの入学記念に貰った杏子の木よ」と妻がいくら言っても聞かなかった。氷砂糖と大きな瓶を所望して、「杏子の実の梅酒」づくりが亡くなる年まで続いた。
「酒のようなもの」は飲まない私と、コップ半分のビールで足の裏まで赤くなってしまう妻だから、「杏子の実の梅酒」の瓶は貯まる一方であった。父の酒量を抑えるために晩酌に付き合い始めた母は、父の死後もその習慣が残っていたが、なぜか「杏子の実の梅酒」には手を付けなかった。
母亡きあとの杏子の木は、梅の実大の青い実を、匂い立つほどに見事な杏子の実に変身させた。杏子の実はジャムになって、ご近所や句友をも楽しませた。「杏子だと頑張ったほうが、結果的にはお母さんを喜ばせたかも知れなかったわね」と妻。「いや、あれで良かったんだよ」と私。「ことしから、急に実がたくさん生ったの」と近所の奥さん。「いやあ、いままでは梅の実を付けていたんでね」と私たち。
梅も杏子もバラ科の落葉高木、花も実も似ていて当然。今年も二つ三つと熟れて落ち始めた。週末には50近い実のジャムつくりが待っている。
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