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  2015年5月11日11時30分、都営地下鉄M線のH駅のH診療所に診察券を出した後、待合室の人数からして90分は待つなと判断した私は、昼食がてら14日の句会の選の出来そうな店を探しに外へ出た。勝手知ったる街に、思いがけずに小綺麗なイタリア風レストランを発見した。

 窓際に二人掛けの小テーブルが七つほど並ぶ中で、一番端に席を定めて早速句選に掛かった。客はまだ私一人御誂え向きだった。サラダが出て、ポッカチオが出て、程なくメインの「春キャベツとアンチョビ入りのなにやら」いう名のスパゲッティが運ばれた。

 その間、洒落たボトルに入った「断じて水道水ではないぞ」という風情の水がまめに注ぎ足された。ウエイトレスは40歳ほどの感じの良い女性で、物腰からして時給を当てにして働いている風ではなかった。

 ところが、その女性が厨房にいる店長兼チーフコックと思しき男性を相手に、労働条件の交渉を始めたのであった。私は、その話の中身を聞くともなしに聞きながら、スパゲッティを手繰り始めた。半分ほど食べ進んだところで、私は妙なことに気づくことになる。スパゲッティの茹で加減は申し分なく、春キャベツも実に新鮮で十分に甘いのに、なにかが物足りない。「そうだ、アンチョビがひとかけらも入っていない」

 さあ、読者諸氏「あなたなら、どうする」ときたもんだ。私はこういう場合文句を言わない主義である。交渉に気を取られて、アンチョビを入れることを失念したコック、それに気付かず運んだウエイトレス、半分食べるまで気付かなかった私。一番悪いのは料理したコックに間違いないのだが、一番馬鹿で迂闊なのは私であるように思う。面白い体験をさせてくれたことに感謝しながら店を出ることにした。

 ところで、私とほぼ入れ替わりに若い女性が6人ほどドヤドヤと来店して、大騒ぎしながら注文を始めた。さて、お立合い、果たせるかなそのうちの2名が、私と同じメニューを選択したのであった。このあとの、成り行きを自由に想像できることで、私の体験は想像の世界にまで広がることができた。ああ、実に楽しいことこの上なし。

 さらにさらに、4週間後に再びH診療所に来る予定の私には、再びこの店も訪ねる楽しみも待っている。こんな第3幕までありそうなショートストーリーを「遅筆堂ひさしさん」に提供できないのは残念至極。

 帰宅後、かみさん相手に話をしながら、似たような体験が過去に2度ほどあることに気づいた。辟易とした表情にはすぐに気付いたが、他人には寛容なくせにかみさんには容赦なく語り切った。読者諸氏は他人であるから、次回に譲ることにする。というより、起床からそろそろ18時間経って眠くなったのが本音である。お休みなさい。

 

 

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