文月
彦星に恋はまさりぬ天の河へだつる関を今はやめてよ 伊勢物語 第九十五段
織り姫を想う彦星よりも
私があなたを想う恋心はまさっているのです
織女との間を隔てる天の川のような
物越しにしか逢おうとされぬ隔ての関を今はとってください
『この歌にめでて逢ひにけり』ということで
歌の力のどれだけ大きなこと...【続きを読む】
イイワケという物怪
イイワケという物怪が
心の中に棲んでいて
何につけても出しゃばってきては
純粋無垢な私の心を弄ぶのです
言い逃れ
逃げ口上
申し開き
などの忌まわしい技を使って
邪念や私欲といった甘い罠で
最後は筋さえも通らない
深い後悔の穴の中へ
引きずり...【続きを読む】
踏み切り
やっとここまでたどり着いた私の行く手を閉じる黄色と黒
ほんのわずかな距離を
まるで果てしない闇の向こうのように意地悪にとおせんぼ
立ち止まったままで時計を見ている
どうしてもあと一歩が踏み出せない
雨の踏み切り 肩を濡らす小さな傘
雫と雨粒が何もかも遮ってしまう
水底に沈んでゆく
手を伸ばしても遠...【続きを読む】
jealousy
好きな人が私ではない人を好きになってしまう
そんなことばかりでなくても
近くの人が超美人だったりお金持ちだったり
カッコいい仕事をしていたりすると気になります
みんな違ってみんないい
そう言ったのは金子みすず
負け惜しみなどではなく
人は見かけじゃないよと心底思えたら
心穏やかに過ごせるのでしょう
...【続きを読む】
緑の国
田んぼの緑 公園の緑 山々の緑
日本には
千も万も変化をみせる植物の緑色があります
やわらかな新緑の季節は
あっという間に通り過ぎてしまいますが
目にも心にも優しいこの色が
このごろとても好きになりました
一本の木の
たくさんの葉っぱの一枚ずつ
全く同じ色のものはないのですね
自然の大きな不思議を感...【続きを読む】
大きくなったり小さくなったり
幸せが一杯に盛られたお皿が我が家にやって来ました
やさしい色合いとちょうど良い深さで毎日大活躍です
特大のお皿に盛りつけても足りない頃もありましたが
今は少しずつ小さい方へシフトしています
ところで もしもです
自分の身体のサイズが自由になるとしたら
大きくなるのと小さくなるのと
どちらがいいかし...【続きを読む】
六月の雨
こんな静かな雨の一日
傘を開いて立ち止まる
周りの音が小さくなって
ひとりっきりの傘の中
やさしい雨は語り続ける
ささやくように踊る雨粒
木の葉の雫が傘に弾んで
言葉にならない言葉で話す
前に進んで後ろに進んで
どちらも怖くて立止まる
弱虫なほど強がることに...【続きを読む】
I miss you.
あじさいの花の咲く少し前の頃でした
驚きと感動とたくさんの幸せを
私のために小さな掌にしっかりと握りしめて
あの日あなたは今日という未来から来たのですね
その日からは喜びも楽しみも哀しみさえも
いつもあなたと一緒でした
そうして季節はいくたびも繰返し
あなたは少女に
そして私は母に
何気ない毎日が...【続きを読む】
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