はなむけ
小さな花束を胸に君は旅立つ
おめでとうしか今は言えない
心の波立つ季節が
はっきりとした足音で
春と一緒にやってきた
花束に添えるのに涙は似合わない
自分の足で歩き出す時が来ることを
分かっていたはずなのに
這えば立てと育んできた自分が
今になって尚恨めしい
決して頑張れとは言わない
きっと君はそう...【続きを読む】
たかしに会いに行く
『烈しい西風が目に見えぬ大きな塊をごうつと打ちつけては又ごうつと打ちつけて皆痩こけた落葉木の林を一日苛め通した。木の枝は時々ひうひうと悲痛の響を立てて泣いた。短い冬の日はもう落ちかけて黄色な光を放射しつつ目叩いた。』( 長塚節「土」)
立派な門をくぐると緑深いお庭に囲まれた彼の生家が
当時のままの姿...【続きを読む】
かくれんぼ
眼に見えるもの
眼に見えないもの
今日もたくさんのものに囲まれて過ごす
自分ではあれこれと深く悩まなくても
無事にひと日を終えることができるのは
たくさんの人の心遣いや気配りの賜物
いつも感謝でいっぱい
でなければいけないはずなのに
そうばかりでもないところが私の イケナイ部分
そんなふうに考えてみ...【続きを読む】
乗合自動車
高校生のころは毎日1時間かけてのバス通学でした
本数が少ないのでいつも同じメンバー
もちろん ず〜っとおしゃべりタイム
今思えば他のお客さまにはずいぶん迷惑なことでした
ある日のことバス会社がストライキ
誰かが自転車で学校へ行こうと言い出して
3時間もかかって山を越えて谷を越えて学校へ
・・・偉かっ...【続きを読む】
おもちゃ箱
思いを綴るとその時々で違う色になる
七色にカラフルにバラエティに富んで
と言えば聞こえは良いけれども
定まらなくてバラバラでつかみどころがなくて
自分でも収拾がつかなくなってくる
一時間前と180度違う気分だったり
一日違えばもちろんすっかり様変わり
いい大人って
もっと落ち着いていて
ゆったりと...【続きを読む】
心の目盛り
マスクやお薬が大活躍で
近ごろの我が家は大忙し
私のメーターも 今日は65%
たまには こんな日も あります
半分を超えていれば
普通に過ごすことはできそう
こんな日は きちんとまじめにおとなしく
大好きなアトムに負けないように
十万馬力には及ばなくても
せめてこの65%を全部使ってがんばります
...【続きを読む】
指
こんな雨の日に指を見ていると
一本ずつがそれぞれにみんな
違う顔をしていることに戸惑います
全部が自分の手に違いないのに
長さも爪の形もそして傷の跡までも個性的
この指にしかできない仕事があって
十本が別々の方向に自己主張する声も聞こえます
気がついた時には
私の小指は少し内側にカーブしていました
...【続きを読む】
as usual
きのうよりもほんの少し早いだけで
朝日はいつもの通りに昇ってくる
「おはよう 」とまた一日が始まって
「いってきます」 をいつものように見送っている
梅の花が去年と同じように
冷たい空気の中で次の季節を告げているのに
また同じ一日が明日も無事に繰り返される保証なんて
そんなものはどこにもないという...【続きを読む】
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