桑原武夫の第二芸術論
大学生の頃、桑原武夫(フランス文学者・京大教授/1904-1988)の論じた第二芸術論のことを知った。学校で教わった俳句や短歌などにあまり面白味を感じていなかったので、なるほどそのとおりだと共感したのである。
1946年に発表された「第二芸術 ―現代俳句について―」(岩波書店の雑誌『世界』に所収...【続きを読む】
本の読み方、句の読み方
大学生の時に「本はどう読むか」(清水幾多郎著/講談社現代新書・1972年)という、本の読み方について論じた本を読んだ。そこに書かれていた要点の一つを簡単に説明すると、著者がじっくり考えて何度も練りに練って推敲したと思われる文章は、読む方も繰り返し丁寧に読んで理解しようと心がけ、そうではなく思ったこ...【続きを読む】
旧字体・旧かなづかい
高齢化が進行している川柳界において、旧字体・旧かなづかいで詠む人がかつて多かった。戦前の国定教科書で国語を学んだ世代である。今ではすっかり少数派になってしまったが、子供の頃に学んだことは時代が変わろうとなかなか直らない。まさに「三つ子の魂百まで」の典型的な例なのである。
昭和3年生まれだった私の...【続きを読む】
漢字とひらがな
漢字・漢語(熟語)は中国で生まれて日本に伝来した。日本にはもともと大和言葉(和語)があった。これを合体して、漢字の訓読みが生まれた。漢字をどう訓読みで当てようか、これは日本人自身の問題、日本語の世界の約束事である。
漢字の送り仮名の議論がしばしばなされる。国語辞典、用語・用字辞典などで確認してど...【続きを読む】
「将来」と「未来」
「将来」と「未来」の二つの言葉の用法の違いについて、「類語国語辞典」(大野晋・浜林正人著/角川書店)には、こう注記されている。「『将来』は、きっと実現しうることや、ある程度必然性のあることに、『未来』は、『将来』より先をさすことが多く、漠然としか予想できない不確かなことに使われる傾向がある。」
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盆栽の宇宙
私の父は松の盆栽を趣味にしていた。昭和の高度成長期の時代、庭先に松や皐月の鉢植えを並べている家は結構多かったのである。
剪定と水やりの手間が大変で、夏場の水やりは中学・高校生時代の私も手伝った。父親が皐月の盆栽を育てている家の友達がいて、お互い水やりの手伝いの苦労で愚痴をこぼし合ったことを憶えて...【続きを読む】
「安全安心」について
「安全安心」という言葉が四字熟語としてすっかり社会に定着している。昔はこんな言い方はなかったのではないか。
安全とは客観的な事実を指す。安心とは主観的な心の状態を言う。客観的な安全性が確保されれば、すなわち主観的な安心感は自ずと生まれ出るはずである。
しかし東日本大震災による原発の安全神話の崩...【続きを読む】
黒船が来れば秋入学
黒船が来航して明治維新があった。日本の近代化はそこから始まり、富国強兵、殖産興業、文明開化が進められた。そして大日本帝国は日清・日露の戦争に勝利し、大東亜戦争へ突き進んで負けるべくして負け、ようやく終戦となる。戦後、GHQの占領下で農地解放、教育改革、財閥解体などの諸政策が遂行され、高度成長期を経...【続きを読む】
文芸仲間の死
以前お話しした「読む会」の仲間の一人が3月に亡くなった。クモ膜下出血で急逝したのである。享年68歳。
内々に葬儀を済ませていたようで、逝去して1週間ほど経ってから訃報が私の方にも届いた。お線香を上げに自宅へ行ったら、奥さんに生前の話しをいろいろと伺って大変驚いた。
別居生活が長く夫婦関係は破綻...【続きを読む】
許可なく立入りを禁じる
前回の続きのような話しになるが、以前少々理屈っぽい人に出会った。その人が「許可なく立入りを禁じる」の看板を見て、これはおかしいと言い出した。
「許可なく」の「なく」は形容詞「ない」の連用形である。ということは、それに続く言い回しのうち用言の品詞に係ることとなる。「立入り」はもともと「立ち入る」の...【続きを読む】
喋れ!喋ろ!
私の卒業した高校は男子高で、一応は進学校だった。それなりに授業は厳しかったが、化学のM先生の時はきついシーンがたびたびあった。一通り黒板を使って教科書のことを説明した後、きちんと理解できたかどうかをみるために指示棒で適当に生徒を指名して質問するのである。生徒が答えられなくて黙っていると、強い栃木訛...【続きを読む】
絆と世間体
9年前、東日本大震災が起きて日本は大変な事態となったが、その頃から「絆」という言葉が広く言われるようになったと記憶している。
個人的にはその当初からこの言葉に少し違和感を抱いていた。何となくもやもやっとしたものである。その後、小説家の五木寛之氏が何かの雑誌の対談で「絆とは本来、断ち切りたくても断...【続きを読む】
栃木県文芸家協会(とちぶん)について
栃木県文芸家協会(通称とちぶん)に入って6年ほど経つ。文芸家と言っても、この組織は職業団体ではない。文芸を趣味とする仲間の集まり、法人格のないいわゆる任意団体である。創立は昭和47年で、一応50年近くの歴史がある。部門としては、小説、評論、随筆、詩、短歌、俳句、川柳の7つのジャンルがある。会員はほ...【続きを読む】
子育てにおけるささやかな実験
オーストリアの著名な動物行動学者にコンラート・ローレンツ(1903-1989)という人がいて、「ソロモンの指環」などの一般書を読んだ方は多いのではないかと思う。動物行動の観察から得た「刷り込み」理論の知見は有名であり、ノーベル医学・生理学賞も受賞している。いろいろな種類の動物を放し飼いして観察する...【続きを読む】
裏と表
大学生の頃、NHK教育テレビ(現在のEテレ)の大学講座を自主的に受講していた。テキストも書店で購入して毎晩のようにテレビの前に座っていた。人文社会科学系の歴史、法律、経済、思想史などの他に、生物などの自然科学分野もあり、著名な大学教授が講義を担当する。中身の濃い30分番組だった。その中で、河合隼雄...【続きを読む】
「善悪の彼岸」から学んだこと
これはニーチェの哲学書である。大学生の時にこれの文庫本を古本屋で買って読もうと試みた。ページを捲ってみたがほとんど何を書いてあるのか分からない。一応哲学専攻の学生だったので、ニーチェの思想がどういうものかの教科書的な知識はある程度持っていたが、いざその著書を読み始めると眠くなるどころか、それ以前に...【続きを読む】
突然の新京極
今から十数年前のことだが、娘が京都の大学に入学することになって、いよいよ3月末に栃木から引っ越しとなった。
大学生活を送る学生ハイツは京都御所の南に位置していて、引っ越し作業の前日に行ってカーテンの取り付けなど、ある程度の下準備を行った。それから近くのホテルに泊まって翌日は朝からハイツに行き、栃...【続きを読む】
YouTubeの衝撃
パソコンにインターネット、ケータイからスマホ、情報ツールの進化に恩恵を受け、なおかつ翻弄されてきた人間の一人だが、YouTubeの衝撃が私個人の中では一番大きかったと思う。
最初は、こんなものにあまり興味はなかった。これは年齢的な問題が絡んでいる。要は中高年になると、そういうものが出回ったってさ...【続きを読む】
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