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 かなり前のことだが、ある雑誌にこんな実験(調査)を行ったことが書かれていた。
 まず被験者に、些か教訓的な短い文章をいくつも読ませる。そして感想を尋ねる。結果はどれも凡庸でつまらいとの回答がほとんどとなる。その後、いずれの文章も有名な人物の言葉だと種明かしする。そうすると、それらの言葉がどれも珠玉のものだと感じ始めるというのである。
 次に別の被験者に、少し変えたやり方で尋ねる。先ほどの文章を初めから名言として誰の言葉であるかを教えて読ませるのである。結果は、どれも読んですぐに感銘するのである。
 名言とその作者(そう言った人)との関係は、作者を伏せると陳腐な言葉だと受け取られやすい。これを実証したのである。参考までに言うと、例に出された有名人は、文豪、政治家、科学者、スポーツ選手などあらゆるジャンルの人であった。
 NHKの短歌や俳句の番組を観ていると、著名歌人・俳人の作品を紹介するコーナーがある。私はその方面は詳しくないので、作品を一読してもすぐには分からない、鑑賞できない場合もある。その後講師の方が、作者の人となりを紹介して作品解説をしてくれると納得する。逆に言えば、作者紹介と作品解説がなければ、高名な方のすばらしい短歌・俳句だと気がつかない。下手をすれば、軽々しくつまらないと酷評して添削までしてしまうかもしれない。
 また短歌や俳句には自歌自註、自句自註、詞書(ことばがき)というものがある。川柳にもいくらかはそういったものがあることはあるが、原則としてそういうスタイルはあまり使われない。
 川柳の源流は江戸時代の万句合(まんくあわせ)の中から優れた前句付けを集めたアンソロジー「誹風柳多留」にある訳で、詠み人知らず(匿名)が基本である。作者がどんな氏素性の人でも、偉くても卑しくても作品の評価には全く関係がない。そこら辺りが師匠から有り難く教わりながら作品を詠んでいく歌壇・俳壇と事情が異なる。
 私には川柳が一番に性に合う。コロナが出てきてソーシャルディスタンスなどの言葉が生まれ、何事もリモートで済まそうという時代がやって来た。作句指導も直接的ではなくなって師弟関係などという言葉が死語となる時代が来るくるかもしれない。そういう世の中では、短歌や俳句もいいが、川柳が一番しっくりするような気がする。ここまで書いてきて、先輩後輩の関係はあっても師弟関係はない、吉本新喜劇が運営しているNSCのことをふと思い出した。

 



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名言とその人、川柳とその人”にコメントをどうぞ

  1. 山田とく子 on 2020年7月25日 at 9:30 AM :

    三上様初めまして。私は浜松のいしころ会に所属しております山田とく子と申します。
    以前マガジン誌の柳豪のひとしずくに掲載された句を拝見して、外観と違ってとてもユーモアのある句だなと感心していました。高名であろうとなかろうと心を打つ句は心を打つ。それは人それぞれですね。印象と中味はそれぞれの感じ方ですが、川柳からお人柄を想像するのはとても楽しいです。人間を詠む川柳はとても日々を楽しくしてくれます。あるがまま、己を大切に生きて生きたく思っています。

    • 三上 博史 三上 博史 on 2020年7月27日 at 9:23 AM :

      ありがとうございます。
      何か小難しい顔をした写真が載ったようですが、本性は親父ギャグが大好きな年金生活者です。
      よろしくお願いいたします。

  2. 坂本加代 on 2020年7月25日 at 5:33 PM :

    毎回のブログ楽しみにして拝読しております。
    日頃自分の考えをこれでいいのかな?と思うことも多く、ふわふわと中途半端な気分を落ち着かせる文章に出会って嬉しいです。
    今日は切り抜いて保存版とさせていただきます。ありがとうございました。

    • 三上 博史 三上 博史 on 2020年7月27日 at 9:30 AM :

      ありがとうございます。
      ブログを始めて早4か月。何とか続いています。数週間分のストックを入れておいて、何度も推敲しながら小出ししています。
      いずれ、ネタがない!という悪夢に悩まされる日が来るかもしれません。行き詰ったら、昔書いた小説やエッセイも持ち出して来るかもしれません。消耗戦かな(笑)。

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