
介護もどき
92歳の老母との二人暮らしをしている。老母は転倒による背骨の圧迫骨折に何度もなって、寝ているだけしか治療方法がない状態を繰り返しているが、その度に頑張って治そうと努力して回復している。それ以外の病気は一応今のところはなく、通院もしていない。薬も飲んでいない。
老母の生きがいは家事である。少しずつ...【続きを読む】

川柳の高齢化
私が下野川柳会に入ったのは平成5年11月である。その頃は37歳だった。宇都宮で毎月やっている例会に初めて参加したのだが、会場の中で周囲を見回すと参加者は私より年配の方ばかりだった。因みに私の結果は宿題、席題とも見事に全没、簡単に撃沈された。しかしこれに懲りもせず例会に参加し続け、結局全没が3回続い...【続きを読む】

短編小説「AED」(4-4)
それを聞いた後、二人は駅ビルの本屋の一件を語り出した。紀子は真剣に耳を立て始めた。
夜も更けて真衣が自分の部屋に戻り、拓真もお風呂に入ってそのまま布団の中に潜り込んでから、茶の間で紀子がコーヒーを淹れながら隆一に訊いた。
「パパ、真衣が再来年の大学受験で医学部志望だということ知らないでしょ?だい...【続きを読む】

短編小説「AED」(4-3)
最後の手段となる電気ショックが始まる。はだけた男性の胸には既にパッドが付けられていた。青年の指示で集まった周囲の人たちは全員後ろに下がって息を呑んだ。機器の音声も体から離れるように言う。
いよいよショックのスイッチを入れる。わずかの時間で男性の意識が少し戻ったような、眠りから覚めたような顔を見せ...【続きを読む】

短編小説「AED」(4-2)
午後六時を過ぎた頃だろうか、二人は玄関を出た。もうすぐお正月、慌ただしさが既にピークになっている時期、商店街に近づくと忙しく歩く人の数もかなり多くなっていた。
「パパ、お店に行く前に駅ビルの本屋に寄って行っていい?参考書を買わなきゃいけないの」と、真衣が歩みを止め、隆一の方へ向き直った。
「別にい...【続きを読む】