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 このブログも4月からは始まって奇数日には必ず投稿するようにしているが、話しのネタもなくなりそうになったきた。
 という訳で、平成30年元旦の下野新聞「新春文芸」の短編小説部門で佳作に入賞した私の作品を4回に分けて掲載することとしたい。これで4回分8日分は稼げることとなる。なお、佳作入賞なので、この作品は紙面には掲載されていない。

 

   AED

 クリスマスも終わっていよいよ今年も押し詰まったという日曜日、神田家は二派に分かれて夕食をとることになった。
 高校二年になる娘の真衣が、テレビなどでよく放映されるイタリア料理というものを食べてみたいと言い出した。そういった洒落た料理を家族四人が改まって食べたことが最近なかったので、たまにはそういったところもいいかという雰囲気が自然と家の中に漂い、その日の午前中にすんなりと決まった。店は、パソコンの検索で近所にあって評判も良さそうな「シエーナ」というお店が見つかり、家族全員異議なしで予約もできた。
 ところが、小学四年の拓真が後から急に嫌だと言い始め、ナイフとフォークで食べるより、回転寿司に行きたいと反対の狼煙を上げてきた。最近鉄道に興味を持ち始めてきて、新幹線の車両で運ばれる寿司皿を取りたくてしょうがない。幼稚園児ではあるまいし、もうそんなことは卒業したら、と家族が何とか説得しようとしたが首を縦に振らない。
 夫の隆一は、仕事帰りの飲み会は居酒屋チェーンでいつも安く仕上げていたので、たまには上品に地中海ワインでも飲んで高級なパスタに舌鼓を打つのもいいかと、真衣の発案にすっかり賛同していた。妻の紀子も同じ考えだろうと隆一は思い込んでいたが、どうもそうではなかった。紀子はずっと専業主婦であり、趣味の園芸仲間とイタリアンは結構食べていたらしい。これには隆一も全く気がつかなかった。紀子は、拓真の側に回ってB級グルメの回転寿司でも構わないという態度をとったのである。
 その結果、二派に分かれた家族の話し合いは、父と娘が近所のイタリア料理、母と息子が郊外の回転寿司へ車で行くことでようやくまとまった。
 夕方となり、まず紀子・拓真のチームが自動車に乗って早めに家を出た。スーパーでの買い物があり、拓真は、回転寿司に行けるならと素直にママに従ったのである。隆一・真衣のチームは、最寄り駅に向かって10分も歩いて行けば目的地に辿り着けるので、その後の出発となった。娘と二人で食事をするというのは、最近の隆一の記憶にはほとんどない。それもイタリアン。隆一は出掛けの服装を整えながら、鏡の前で髪を梳かして一つにまとめている娘に目をやった。高校生とはいえ日増しに大人びていく成長を改めて感じた。

 

 



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