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 それを聞いた後、二人は駅ビルの本屋の一件を語り出した。紀子は真剣に耳を立て始めた。
 夜も更けて真衣が自分の部屋に戻り、拓真もお風呂に入ってそのまま布団の中に潜り込んでから、茶の間で紀子がコーヒーを淹れながら隆一に訊いた。
「パパ、真衣が再来年の大学受験で医学部志望だということ知らないでしょ?だいたい今いるクラスが理系コースだということも知ってた?」
「理系コースのことも知らなかったけど、えっ、真衣は医者を目指すの?」
「真衣がまだ小学生の時、大阪のおばあちゃん家へ遊びに行って、おじいちゃんの救急車騒ぎがあったでしょ。あれ以来医学に興味が湧いてきたようで、理系コースに進んだけど医学部が本命なのよ」
 隆一は、自分の無知は棚に上げて、真衣が真剣に自分の将来を考えていることに驚いた。
 それから年が明けて春を迎え、高校三年の受験生となった真衣は、医学部進学を目指すことを家族に宣言し、勉強をさらに加速させていった。学費のことが心配になるだろう隆一へ配慮して、国公立を第一志望にした。これは大学に入ったなら多分家を出るということ、それも遠方の大学に行くかもしれないということを意味し、隆一に淋しい予感を与えるものだった。しかし、親としての覚悟を少しずつ固めていくものでもあった。  (完)



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