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 去年の9月中旬、娘夫婦が当時1歳半近くになる孫娘を連れて我が家へ里帰りした。4日ほどの間だったが私も楽しい時間をたっぷり持たせてもらった。
 滞在中のある日近くの遊園地へみんなで出かけた。朝からずっと快晴で暑かったが蒸していなかったのでそれほどの不快感はなく、いろいろな乗り物に乗り、孫娘を囲んで楽しい一日を過ごした。
 夕方自宅へ帰ってきて、孫を風呂に入れて夕飯を食べさせると、孫は普段と同じように布団に横になり寝始めた。その後娘夫婦は外食に出掛けた。私は孫の見守り役を頼まれたのだが、これは娘の家でも我が家でも今まで何度か経験していることなので、快く引き受けた。
 さて娘夫婦が家を出てしばらくすると、孫が少しぐずり始めた。私は隣りの茶の間で音量を小さくしてテレビを観ていたのだが、寝ながらしくしく泣いているのが聞こえた。娘夫婦の育児方法としては、一度寝かしつけたら、起きて泣き出してもなるべく抱いてあやすことはしない。部屋の灯りも点けない。そうしていると暗い中でそのまま再び寝入るのである。真夜中に突如夜泣きされたらさすがにそうはいかないが、大方はそれで済むらしい。
 ところが今回は寝ながらのぐずりが続いている。横顔を敷布団にくっつけて芋虫のように俯せになり、少しずつ動いている。まだ暑いのでバスタオルぐらいしか上にはかけていない。そして布団の端に行きそうになる。畳の上に転がってはさすがにまずいだろうと思い、私がそっと行って体を少し支え布団の方に戻す。テレビを観ているどころではなくなってきた。推測するに、昼間の遊園地は上天気でもの凄い人出だった。多分、その興奮が眠りの中でまだ収まっていないのではないか。昼の名残が夢に出ているのだろうか。これは今までと違うかな、などと思い始めた。
 なかなかぐずりが収まらないので遂には抱き上げてしまった。しかし娘夫婦に言われているとおり部屋の灯りは決して点けない。縁側の月明かりで孫の表情を覗くと、暗がりの中で目を少し開けながらしくしく泣いているのが判る。しかしそれ以上は喚かない。灯りを点けたら、きっとママやパパが居ないことに気づいて余計に騒ぐのではないか、そうも考えた。
 確か前々日が十五夜だった。その二日後の今夜も月明かりは同じくらいに煌煌としていた。十五夜は月の明るさもさることながら、その位置も空の真上近くではなく、南の空を見上げると丁度ぽっかり見えるくらいの高さで浮かんでいた。縁側から部屋の中へ明かりが差し込んでくる。戸を少し開けていたが、そこから来る夜風が気持ちいい。二日後でも十五夜と同じくらいの月明かりを浴びながら、私はしばらく孫を抱いていた。生まれた頃より体重もかなり増えたが、その重さが何とも言えず心地よい。同じ重さの漬物石だったらとうにギブアップしていただろうが、孫となるといつまでも全く平気。孫は暗がりなので泣き喚かない。目を開けながらここは何処、いつもと違うな、誰に抱かれているのだろうと首を振りながらきょろきょろし始めた。しかし、ついに根負けしたのか目を閉じてまた眠りに入った。仰向けに寝せるとすぐにまた俯せの芋虫状態になり、少しずつまた動き始めた。それを月明かりが照らしていた。しばらくして娘夫婦が帰って来た。



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