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 昭和30年代の終わり頃、私は小学校の低学年(最近は「下学年」と言うらしいが)だったが、学校にプールは無かった。夏休みは近くの川で遊んだ。先生や父兄が監視や見守りをやってくれていた。大した流れの川ではなく、水もそれほどきれいではなかったと思うが、その冷たさにみんな大はしゃぎで遊んだものだった。
 まだクロールも平泳ぎもできなかった私は、実はその川で溺れたことがあった。溺れたというより川に流されたという表現の方が正確かもしれない。それほど深くないのにあれよあれよと流され沈んでいく。わずか十数秒の時間だったかもしれない。しかし、それに気づいた上級生がしっかり受け止めてくれて事なきを得た。だから騒ぎになることもなく、友達に知られることもなかった。しかし忘れられない思い出である。
 時代は大きく下がって平成の初めの頃、娘がまだ保育園児だった頃、よくプールへ連れて行った。夏のある日、たまには変わったところで水遊びさせようと、小山にある遊園地のプールへ行った。初めてだったが、流れるプール、波のプールと泳ぎ回って、最後にウォータースライダーへ行った。ぐるぐるトンネルを回るような大きな仕掛けのものと、大した長さではない子供向けのものと二つあり、当然小さい方を選んだ。
 階段を二人で昇り詰めて、いざ滑ろうとする。子供一人では怖くて無理だろうから後ろにくっついて二人で滑ろうとした。まず娘をスタートに着かせてそれから自分も腰を下ろそうとしたら、娘が勝手に滑り始めてしまった。滑り落ちたプールは娘の背丈より遙かに深い。やばい溺れてしまう、と咄嗟に判断して私も慌てて滑り降りた。案の定、娘は手足をバタバタさせながら溺れていた。すぐに救い上げたが冷や汗ものだった。
 満員のプールでみんながはしゃいで騒いでいる中、気がついたら小さな子供が溺死していたというニュースを聞いたことがある。娘もそうなっていたかもしれない、などと想像すると今でもぞっとする。その後、夢にこのことが何度も登場した。夜中に飛び起きて助けようと立ち上がったこともある。
 自分が子供の頃に溺れたことは記憶に残っているが、夢に出てくるということはない。しかし自分の子供のこととなると、悪夢として何度も甦る。そういうものなのかもしれない。



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