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 以前、テレビのクイズ番組を観ていたら、世界地図の問題が出されていた。日本を含めたいくつかの国は青色で塗られている(それ以外は白色)。これはどういうことでしょうというのが設問だった。日本以外の青色諸国は、東南アジアのタイやマレーシア、ヨーロッパならイギリス、オーストラリアやインドも青で塗られていた。
 私は、日本とイギリスが青く塗られていたのでその共通点は車の右ハンドル、左側通行のことではないかと閃いて、すぐに正解を言い当てた。そしてテレビの前で大いに満足した。
 さて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が起きてからしばらく経過した頃、NHKのニュース番組で世界の民主主義の現状を示す世界地図が紹介されていた。スウェーデンの研究所が国別による民主主義の度合いを色分けしたものである。いろいろな観点(「公正な選挙」「基本的人権の尊重」「言論の自由」「女性の社会進出」など幅広い基準をもとに数値化)から、とりあえず青と赤の二色に分け、さらにそれぞれの色を細分化(青色・水色系統、赤色・橙色系統)している。ちなみに青系統で示した自由で民主的な国・地域は60、赤系統で示した非民主的なそれらは119だった。
 私はこの色分けの二分法に対してすぐに違和感を感じた。民主主義か非民主主義(権威主義)かを車の右ハンドル・左ハンドルのようにはっきり区分していいものか、大いに疑問を持ったのである。
 世界の国々の政治体制を青(安全なイメージ)か赤(危険なイメージ)かの二項対立的な考え方で捉える。民主主義がさらに発展していけば地球上は青色の国が増えていく。そしてそれが望ましい世界のあり方だと考える。この地図はそういったことを言いたいのだろうか。
 非民主主義と名指しされた国家の統治者が、そもそも自国をそのようなものとして素直に認めるだろうか。かなり疑わしい。世界の国のほとんどの統治者は、自由と民主主義を標榜してして政治を行っていると、少なくとも自分の頭の中では考えているのではないか。
 欧米の自由主義諸国の尺度で勝手に数値化されたものによって、簡単に非民主的として赤色に括られるとしたら、納得しない統治者は多いことだろう。独裁者は自分のことを独裁的だとは素直に思っていないはずだ。民主的な手続きで選ばれ、国民に対して自由を保障していると当人は信じていることだろう。
 日本は欧米資本主義諸国と同じ自由を尊重する民主的な国だ自負していれば、件の世界地図に何の疑問も抱かないだろうが、本当にそうなのか。日本人の精神風土、日本の政治思想史を踏まえた日本独自の政治形態があるのではないか。これはなかなかイメージしづらいことかもしれないが、世界を自由と民主という価値観で青と赤に分けるなら、日本はそのどちらでもないのではないかと思いたくなってくる。車のハンドルの位置のようには区分できないのが政治や社会に対する考え方なのではないか。いや、そもそもそれぞれの国の中に青色と赤色が混ざり合っているのかもしれない。それが本当の姿なのだろう。



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