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 宇都宮の吟社「遊人」へ毎月川柳指導に出向いている。先月開かれた句会に、こんなハプニングが起きた。
 課題「うまい」に9名の会員がいつもどおり事前に二句投句した。作品を一覧表にしたものが当日の出席者に配付され、各自が読み込む。挙手による互選を行って準特選を一句から二句、入選を二句から四句、得点の高い順に決めていく。それでは特選はというと、これらの民主的な手続き(?)とは別に私個人の選(独断と偏見に満ちているか?)で一句が決められる。
 その日は、出席者の一人が何を勘違いしたのか、翌月の課題である「芸」で二句詠んで提出してしまった。時すでに遅し。一覧表にしっかりそれらが混じっている。そして何と私が特選句にしたのはそのうちの一句だったのである。
 私が特選句「極めればテレビに映る大喰らい」を披講したら、当の作者が少しにやにやしながら呼名した。そして間違えて「芸」で詠んだのに特選になり、嬉しいやら恥ずかしいやらの心境であると心情を吐露してくれた。そう言われてみれば、課題からずれた作品にも見えてくる。しかし「うまい」と全く関係ないとも言えない。大喰らいという芸もそもそもは食べ物をうまいと思うからそうしていると言えるだろうか(強いてこじつければの話しかもしれないが)。うーん、私も少し気恥ずかしくなってきた。でも開き直っているところもある。
 実を申せば、私は課題吟の選をする場合、課題とあまり関係なさそうなものでも作品自体が上手くまとめられていると、それを評価して入選にする傾向がある。いや、これが私の選句スタイルなのである。選者によっては、課題との関係を重視して、課題から外れていると思うとたとえ佳句でも抜かないという考え方の人もいる。いやそれが多数派なのかもしれない。
 ところが私は、作品として詩情(ポエジー)が感じられるかどうか、措辞に巧みなところがあるかどうかに拘泥するのである。五七五の限られた音数だからこそ、詩情のあるきちんとした形の作品になっていないといけない。これをいつも念頭において選をしているので、課題から少しぐらい離れていても、味わい深い作品なら高く評価したくなるのである。課題はあくまでもヒント。そこからどうやって発想の海へ漕ぎ出していくか。そこに着目することにも興味が湧いてくる。
 さらに課題に対してユニークな発想を持ってきて十七音に詠み込んでも、全体が説明的であったり、てにをはの使い方や用言の活用の仕方などがうまく出来ていないと思えるものは没にしてしまう。それは、推敲すればもっとうスマートに詠めたはずなのに、と考えてしまうからである。課題にもたれ過ぎた作品は、座の文芸としての句会で入選して興じられても、時が過ぎて改めて柳誌に載ったものを読み返すと、説明的でさほど味わいがあるとは思えないなぁと評価し直すことがよくある。文法的に稚拙なところがあると改めて気づいてがっかりする入選句も目にする。
 春から川柳マガジンの「超柳派誌上句会」の選を担当することになり、すでに募集は始まっているが、応募者には、私はそういう選のやり方をする人間であることを一応お伝えしておきたい。まっ、マウントをとるような言い方になってしまうが、課題に対する着想を得たならば、推敲を何度も重ねて、文法的にきちんとした趣のある作品にしてください。作者が素直に思い描いた詩情を読者にすんなり感じさせる措辞を期待しています。説明的な言葉の運び方にならないように留意しましょう。

 

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