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 栃木県子ども総合科学館という施設が宇都宮市にある。結構人気があって、栃木県民なら子どもを連れて必ず行く施設ではなかろうか。私も娘が小さかった頃は何回も行った。特に雨の日など、どこにも遊びに連れていけないような時には格好の場所だった。確実に1日を楽しませてくれる。
 その科学館にはいろいろな展示や遊び場、体験コーナーがあるのだが、「ななめの部屋」というのが結構おもしろい。最初に入った時は、めまいがするくらい相当参ってしまった。しかし、何度も足を運んで体験を繰り返してくると次第に馴れてきて、気持ち悪くならないコツを覚えた。
 一般的な人間なら、普通では有り得ない斜めに傾いた部屋のしつらえ(壁や窓や柱、それに椅子・テーブルなどの家財)をどうしても斜めであると認識したくない意識がまず働くからだろう。この部屋は斜めではないと、部屋全体の傾きの奇妙さを視覚的に拒否しようとする心理的な作用(これは何かの間違い、錯覚、勘違いなのだというこだわり)が出てくるからめまいがするのであって、この部屋は普通では有り得ないけど実際には確かに傾いているのだとそのとおり素直に認識して受け入れれば、次第に平気になってくるのである。
 正常性バイアスという言葉がある。災害が発生した時の避難で、自分(の家)は大丈夫だろうと思い込んで逃げようとしない。集中豪雨、地震・津波などの災害で、避難警告を無視してしまう場合によく語られる。
 しかし正常性バイアスを捨てて適切な行動に移るというのはなかなか難しい面もある。日々繰り返されている日常生活が突如破壊されそうになる、暗転するような場面に出くわす。これを瞬時に悟って機敏に行動することは案外難しい。言うは易く行うは難し。
 正常性があるなら異常性もあるだろう。異常性バイアスが強い人は、何につけ異常だと認識したがるので、神経過敏や心配性になり、クレーマーとして人騒がせな存在にもなり得る。
 今回のコロナ騒ぎでも、新しい日常とかウイズコロナなどと盛んに言われているが、現実に人間の心理というのは、どうしても正常性バイパスが働いてしまう。私はコロナに感染しないだろう、今までの生活で大丈夫だろうと思い込んでしまう。もちろんその反対の神経質の塊みたいな輩もいるが。
 ななめの部屋の体験と同じように、今までずっと持っていた認識、観念をリセットして考え方を改めるというのは、何度も繰り返し経験しないとなかなか懲りないことなのかもしれない。一度経験しただけで懲りることもあるだろうが、その反動で過剰な行動をしてしまうこともある。正しく恐れる、などと尤もなことを言われても、実際にはどうしていいか分からなくなり、パニックを起こしてしまうこともあるだろう。
 人の頭の中には正常性バイアスと異常性バイアスの心理が同居・共存していて、それをケースバイケースで使い分けしているような気がする。まるごと正常性バイアス、まるごと異常性バイアスの人間は存在しないのではないか。



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ななめの部屋”にコメントをどうぞ

  1. 德永楽遥 on 2020年9月11日 at 9:51 AM :

    短気、薬缶から湯気がたつも異常性バイアスのなせる業か。我田引水で納得。

  2. 三上 博史 三上 博史 on 2020年9月12日 at 11:45 AM :

    ありがとうございます。
    短気の人は、必ず呑気なところを持っています。逆もまた真なりです。

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