以下は川柳研究会「鬼怒の芽」の柳誌第267号(平成31年3月31日発行)・第268号(同年4月30日発行)の「あとがき」に書いたものである〈原文は縦書き、一部加筆あり〉。
先日、隣市に行く用ができ、以前からその市にある某銀行へ普通預金口座を開設しようと考えていたので、用事を済ませてからその支店へ向かった。
窓口で簡単な書類作成と身元を確認する運転免許証の提示を求められた。担当がネッワークシステムを使った検索で少なくとも私が不審な怪しい人物ではないことを確認した。その後上司と思しき人と何やら話してから、市内居住者・勤務者ではないので通帳は作れない、また最近は新規口座開設が悪用されて詐欺事件などにもなっているので無理である、地元の銀行を利用してください、と丁重に断られた。
こちらとしては、生命保険の個人的な年金の振込み先として利用したい旨の開設理由を丁寧に話したが分かってもらえない。窓口で押し問答しても他の客に迷惑がられるのではないかと思い、仕方なく引き下がって近くにあるもう一つの銀行へ出向き、そこでスムーズに新規の通帳を作ってもらった。
このサービスの違いに大変驚いた。どうしても納得できなかったので、後日断られた銀行の本店(所在地は県外)にあるお客様相談窓口に電話をかけた。回答は支店と同じような内容だったが、改めて支店の方から電話をかけさせていただくということになった。
翌日に来た電話の内容は、そちらに伺って事情を説明したいということなので、どうぞ来てくださいと素直に応じたが、その後に続くやりとりで、やはり口座は開設できないことを繰り返した。受話器を握りながら私の方も少し興奮してきて、それでは何しに来るですか、口座開設が無理なら、そういう銀行はそちらぐらいなのだろうから、ホームページや店の案内などでその旨をきちんと告知・周知すべきではないか、と少し嫌味を交えながら話し出すと、空気が微妙に変わって電話の向こうの相手は少し退いてきた。その様子が受話器越しに分かった。結局来訪を断ったが、私が頭に来たのは、口座が開設できなかったことだけではなく、自分の言い分は曲げず、だがお客には対しては自宅までわざわざ来訪して形だけの誠意を示そうとした魂胆である。銀行はお客に対して常には愛想いいが、事情が変わると手の平を返す。その醜さの片鱗を見たような後味の悪さを覚えた。