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 我が家では、私が小さかった頃から毎年草餅をよく作った。近くの川の土手に蓬がよく生えていて、3月3日のひな祭りには間に合わないが、3月下旬、春休みの頃には親子でいつも摘みに行った。
 草餅は、少し平らにした饅頭のような形にして作っていた。一個一個作り上げる最後の仕上げの時に、人差し指、中指、薬指で押して平らにするので、その三本指の跡が残った。出来上がると、砂糖を混ぜた黄な粉に付けて早速それを食べる。2、30個は必ず作り、それが昼食とか夕食になる。老母が90歳頃まで作っていた。
 黄な粉で草餅を食べることは我が家では当たり前のことだったので、和菓子屋で餡の入った草餅、餡の付いた草団子が売られているのを知った時は、驚いて少し違和感を感じたことを憶えている。餡を使った草餅や草団子の味に慣れるのには少々時間がかかった。
 黄な粉は安倍川餅にも使うがこれも美味しい。正月には我が家で搗いた餅を使った安倍川餅も必ず食べた。草餅や安倍川餅で使った黄な粉が余ると、ご飯にかけて残らず食べた。これもなかなかの美味だった。
 さて黄な粉は乾物屋などで買ってくると適当な量の白砂糖を入れて混ぜ込む。ここで発見したことがある。砂糖にある「だま」は無理してこれら全てを潰そうとしないで、そのままにしておいても、だま付きの黄な粉の草餅はそれらりに美味しいということである。粉物のだまは悉く嫌われそうな存在であるが、黄な粉の中の砂糖のだまは別格である。草餅でも安倍川餅でも、口に頬張ってみて、むしゃむしゃ食べながらだまに当たるとラッキーと思ってしまう。私の密かな楽しみだった。
 最後に我が家の草餅は、蓬が生えている3月から4月にかけて何回も作った。余ると冷蔵庫の冷凍室に凍らせて保存した。解凍して食べるとこれも美味しい。しかし、解凍時間を間違えると、どろどろに融けて搗きたての餅のようになってしまう。これは要注意だった。



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