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 先月のNHK短歌・俳句の番組は、今年の3月28・29日にそれぞれ開催された全国大会の結果報告(それぞれ4回ずつの放送)だった。いずれの番組もその内容は、当日の様子を撮影した映像を部分的に紹介し、さらに大会選者として加わった歌人・俳人(それぞれ3名)がスタジオに招かれて選評を改めて述べ合う構成になっていた。
 NHKの短歌や俳句の全国大会が、大晦日の紅白歌合戦にも使用される東京渋谷のNHKホールで毎年開かれているというのは、川柳愛好家には実に羨ましい限りである。同じくNHKの川柳全国大会の方はいつも東京国立市のホールが開催されていた。会場の規模が違い、短歌や俳句ほどの参加者数にはならない。もし渋谷でやったら座席はスカスカになってしまうだろう。
 川柳の大会は今もやっているのだろうか、ふと気になったのでネットを開いて検索してみた。誌上全国大会は見つかったが、国立市での最新の大会開催は見つけられなかった。実際に参加者が会場に出向く大会は中止になったのか。もう開催しなくなってしまったのか。もしそうなら、ため息が出るほどに淋しい状況である。
 さて、今回は短歌の方の番組で気がついたことがあったので、以下に思うところを記してみたい。
 いくつもの特選作品が紹介され、当日の選者でもあった3人の出演者から具体的なコメントがなされていた。その中の一つに、メロンゼリーが匂う我が子(幼子)がママ(作者)に対して、絶対に死なないように気をつけてと、幼いながらもお願いするという場面を詠んだ作品があった。幼子が発する微笑ましくも真剣な言葉を通して、いろいろなことを日々経験して学び、そして成長していく姿を親の立場から感慨をもって受け止めたものである。
 大会でも番組でも、複数の選者のコメントに「メロンゼリー」の「メロン」は動かせないという発言が紹介されていた。ある選者は「『レモン』や『イチゴ』ではだめだ。メロンがいい」と付言していた。なるほどそうかもしれないとテレビ画面を眺めながら私も同感であると思ったのだが、いや、そんなこともないのではないかと微妙に思い始めた。レモンならとにかく酸っぱい、イチゴなら子供にとっては大好物の定番である。それらのことをイメージしながら、メロンが一番相応しいと言い切れるのだろうか。三音という音数の嵌め方を踏まえると、りんごやみかん、ぶどうやピーチ(桃)でもいいのではないか。いろいろな果物を挙げてみると、メロンの措辞の妥当性(硬い言い方だが)が少しずつ揺らいでくる感じがしてきた。さらにツッコミを入れるとすれば、メロンはそのままにして、ゼリーの方をアイスやジュースに置き換えられないか、と思いがそっちの方に及んだ。テレビの画面越しにケチをつけた感じになってしまったが、これはあくまでも自宅の茶の間という空間の中で寛ぎながら視聴している私一人の感情と思考の世界である。
 番組を観終えてから、ふと気がついた。短詩型文芸というのは、言わずもがなのことであるが「座の文芸」である。座というその場に入り込んでみんなとその楽しい雰囲気に浸りながら作品を鑑賞するものである。私はテレビ越しの歌会という、あまり臨場感のない座を眺めているに過ぎない。もし私が大会の会場にいたら、あるいは収録スタジオの片隅にでも立っていたら、選者が言う動かないという意見に100%賛同したのではないか。この言葉は動かないという発言に共感を覚えるには同じ空気を吸うという座の雰囲気が必要だったのではないか。番組では、進行を務めるNHKの女性アナウンサーが選者のコメントに一々頷いていた。これが印象に残った。短歌をあまり嗜まないアナウンサーだったとしても、この番組の中ではしっかりと座の一員なのである。
 なお、大会を紹介した映像の中にこの作品の作者へインタビューする場面もあった。その中では、実際に匂ったのはメロンゼリーだったのか、いやそうではなく別の果物だったが推敲の過程でそのように直したのかのやりとりはなかった。事実がどうなのか、少し気になった。そして、もし事実はりんごだったけど、メロンの方がぴったりすると思って添削してみた、などとコメントしてくれたら、私はその鋭さに感服したかもしれない。
 俳句・川柳の世界では「句が動く、動かない」という言い方をよく使う。この言葉は動く、いや動かないと解釈・鑑賞しながら言い合うこともある。「動く」は自動詞で、他動詞にすると「動かす」である。「自ずと動く」のか「能動的に動かす」のか。どちらかというと対象となる題材を自動詞的に観察するのが一般的であろうか。句を詠む、あるいは読む上で、ありのままに受け入れようとする姿勢が根底にあるからそうなのであろう。こういう行いをしたらこういう結果を得たというような他動詞的な写生をしても、最終的には、こういう状況になったと自動詞的に受け入れて余韻を残す。何につけ物事をなるようになる世界にまとめあげようとする。メロンもゼリーもそうなのだろう。これが短詩型文芸の原型的風景なのかもしれない。

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