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 緊急事態宣言が発出された、などという表現が報道などでしばしば使われる。「発出」という単語は聞き慣れないものである。一般的な国語辞書には載っていない。でも役所の人はこれを使った文章を作成して首相などが何の躊躇いもなく読み上げる。「発令」ならば聞き慣れているが、微妙に意味合いが違うから役人はこの二つを使い分けているのだろう。「発令」には命令のニュアンスがあるから宣言というものには似合わずこれを避けた訳である。しかし受け取る側の国民のほとんどは緊急事態宣言を国からの命令(発令)だと受け止めている。官と民とのズレである。官はこのズレを認識しようとせず、己の論理(理屈)だけで物事を進めていく。官の方の自己満足という側面が覗いている。
 「発災」という言葉がある。これも国語辞書にはあまり載っていない。平成23年3月11日に起きたあの大きな出来事は、「東北地方太平洋沖地震が発生」し、「東日本大震災が発災」したというのが正確な言い回しになるのだろうか。「はっさい」とそれだけを耳から聞いたら、「僕は八歳」の「はっさい」と受け取る方が自然だろうか。これもお役所の言葉である。一般には定着していない。
 お役所言葉ではないが、火災警報などが鳴ったというような時、施設の警備を担当する者は「発報した」と言う。「警報」が鳴って「発した」から「発報」ということなのだろう。銃撃事件なら「発砲」、缶ビールより安いのは「発泡」酒、どうにもならないのは「八方」ふさがり、上方落語には月亭「八方」という人もいる。これらの方はどれも馴染みがあるから「はっぽう」と聞いて言葉を勘違いすることはない。あまり目にしない「発報」は専門用語、あるいは業界用語的なものなのだろう。
 話しは戻るが、「発出」や「発災」を臆面もなく使う役所の自己満足的な言葉づかいというのは相当しぶといもので、懲りることはない。治ることもないだろう。テレビなどで官房長官の言葉を選んだ発言を聞けばよく分かる。政(まつりごと)の根幹の一つになっているのである。

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