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 私がサラリーマンの現役だった頃のことである。
 ある部下と休み時間に、私と同期入職のAについての噂話をしていた。Aの悪口、陰口を言っているのではなく、人柄とか個性をただ面白おかしく話していたのである。その流れで私がつい口を滑らして「Aは俺より仕事は出来ないけど、俺より人(人間性)はいい」と言ってしまった。そうは言ってしまったが決して悪意はない。ほとんど冗談のつもりだったのである。そのことは部下も理解していたが、その部下は少々理屈っぽいところがあり、偶におもしろい反論を返してくることがあった。
 その時もすかさず「仕事が出来なくて人が悪い人はいますか?」「仕事が出来ない人は大体人がいいんじゃないですか?」「仕事が出来なくて人が悪い人は最低でしょう」と矢継ぎ早に反論を出してきたのである。最初は驚いたが、これが妙に説得力があって、いろいろ話していくうちになるほどうまいことを言うなぁ、と最後には感心してしまった。
 私の上司で見事に仕事が出来ない人がいた。何をやってもダメ、知識も判断力もないから部下に何も指示が出来ない。しかしとにかく人がいい。私が仕事のことで話しかければ、すべて私の提示した案が通ってしまう。反論がないのでこちらにストレスはかからない。プライベートでは気前がいい。食事でも飲み会でも奢りたがる。家族で旅行に行った時には必ず職場へお土産をいくつも買って来てくれる。これほど人がいい人間はいないのではないかと思うくらいだった。
 さて先ほどの部下の話しを聞いて、すぐにその上司のことを思い浮かべたのである。部下の話しはまさに正論だった。
 その後職場の人事異動でいろいろなタイプの人間を観察してきたが、人柄を褒められる人間のほとんどが仕事のあまり出来ないタイプであることが判った。逆に有能でスマートに仕事をこなすタイプは、個性が強くて癖もあり、ある意味で人が悪かった。
 人がいいイコール仕事が出来ない。仕事が出来るイコール人間性が悪い。この法則は大体当たっている。仕事が出来て人もよかったら神様に近い偉い存在なのかもしれないが、自分を押し殺して生きているようで多分長生き出来そうもない気がする。仕事も出来なくて人間性もよくなかったら、これは人として最低であろう。
 ついでに言うと、中間管理職について、上司の評価が高い管理職は部下の評判は悪い。忖度とゴマすりが得意だから部下の面倒などよくみない。逆に上司に対して物事をはっきり言ってしまいいつも上からの評価が低くなってしまう上司は、部下からの信頼が案外篤かったりする。上司からも部下からもよく思われている管理職は神経をすり減らして早死にする。上司からも部下からもよく思われていない管理職はとんでもない人間として組織から速やかに追放される。これは極めて単純化した考え方だが、一面の真理はあると思う。



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