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 テレビのある医療ドキュメンタリー番組を観ていたら、そこに登場した地域医療に携わる医師が、ピンピンコロリという最期は家族に対して些か厄介な死に方だと語っていた。その理由を聞くと、突如ピンピンコロリと死んだら、預金通帳や保険証書の仕舞い場所などの葬儀や相続で必要な情報が、残された家族の誰にも分からず困った事態となる場合があるからだ、とのこと。
 死期が近づいて、病に苦しみながらも少しずつ観念していく。死や死後のことについて、周りに迷惑をかけたくないとも思ってくる。当人も家族も少しずつ覚悟を決めながら、生き永らえて終えることの意味をもっと深く理解する必要があるのではないか。ピンピンコロリという言葉の響きの軽さに、私自身はずっと馴染めないでいたので、その医師の話しには目から鱗が落ちたように納得した。この言葉を川柳に詠み込んだ作品に出合ったりすると、その心情は分からない訳ではないが、いつも何か噓くささがつきまとう感じがしていた。
 人生100年時代などという言葉もあまり好きではない。日本人の平均寿命が男女とも80歳を超えて、新聞の訃報欄には90代で亡くなられる方が多くなった。100歳を超えた人は日本に現在約7万人いるらしい。しかし50代、60代で亡くなられる方も依然多いし、若い世代の病死・事故死も少なくない。近い将来は別にして、人生100年という話しは現在の状況にはそぐわない。数字を切り上げした誇張表現である。
 しかしこれが既に独り歩きして、メディアによく使われ、生命保険、医療保険、介護関係のセールスでは必ず出てくる言葉になっている。なかなか実感が伴わないものなのに、それを前提にいろいろと将来の人生設計の話しを持って来る。商売だから仕方ないのかもしれないが、顧客に寄り添う気持ちがあるなら、あまり頻繁に使ってほしくない言葉である。

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