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 我が家のお正月は、かつて毎年自宅で餅を何臼も搗いていた所為か、三が日の朝は毎度雑煮を食べていた。大根や人参なども入れた芋汁に餅を入れるのが定番である。94歳で昨年亡くなった母は死ぬまで台所に立って雑煮を作ってくれていた。
 雑煮の他にお節料理も用意するので、正月の朝は当然慌ただしい。焼いたお餅と刻んだ葱を最後に入れて雑煮の鍋はようやく完成するのだが、最後の鳴門巻きを切ってお椀に入れるのを忘れることが多かった。よく私が「鳴門が入ってないよ」と催促して母が慌てて入れたり、「今日は勘弁。明日は入れるから」と省いたりすることもあった。
 よくよく考えると、鳴門巻きは正月料理の食材の中で、単なる飾り物、添え物の位置に成り下がっている。鳴門の渦潮を連想する赤い渦巻は、彩りだけが取り柄で食べてさほど美味しいと感じるほどのものではない気がしていた。同じ練り製品なのに、蒲鉾や竹輪より味にインパクトがなく弱い立場に位置するようである。ここまで書いてしまうと鳴門巻き製造業者の反感を買うかもしれない。
 ラーメンがまだ中華そばと呼ばれていた昭和の頃、麺に載せるトッピングの定番は、横綱としてのチャーシュー、大関としてのシナチク(メンマ)、関脇の焼き海苔、小結の刻み葱が定番だった(一応の私見です)。鳴門巻きはそれらの枠から離れていた。要は無くてもいい存在だったのである。それが証拠に、スープや麺にこだわった大手ラーメンチェーンが繁盛して全国に展開されるようになると、それらの店では真っ先に鳴門巻きの存在価値が消されていた。
 スープの味や麺の歯応えに勝負をかけて商売しようとすれば、単なる彩りの添え物には残念ながら用はない。省かれ消滅される運命だったのである。ハム並みのわずか数ミリの薄さにしてけち臭く経費節減していたことも消費縮小へ誘導される要因になったのだろう。薄切りにされて大した味が感じられなければ、もうトッピングに入れなくてもいいかと判断されるのは当然のことかもしれない。ここまで書いてきて、鳴門巻き製造業者は更に激怒し、その極地に達するかもしれない。
 お雑煮で母が毎度鳴門巻きを入れ忘れてしまうのを見るに見かねて、ある年から私が忘れず冷蔵庫から取り出して入れるようにフォローすることとなった。正月三が日だけの雑煮なので、私が厚切りに切って全部使い果たそうとしたのである。
 鳴門巻きは厚切りにして改めて噛み締めると、何と美味しいことか。口の中に練り製品特有の風味が見事に広がる。たかが鳴門巻き、されど鳴門巻き。薄切りだったから大した味も感じられず、軽んぜられていたのである。
 カップラーメンにもミニサイズの鳴門巻きがかやくに入っている場合が多いが、そんなものは味などしない。まさに彩りだけの添え物のごまかしである。中森明菜のヒット曲風に言えば「♬ 飾りじゃないのよ鳴門は HA HAN…」となるだろうか。
 鳴門巻きが衰退していった原因は薄切りにあった。ハム並みにけちって薄切りにし、それで材料費を浮かせていたせこいラーメン屋の方も責任の一端がある。
 最低何ミリ以上の厚さにすべしという製造する業界の申し合わせ事項を設けたらどうか。そうすれば口の中でしっかり味を嚙み締められてその旨さが分かってくるだろう。こういうことを推進していって鳴門巻きの旨さが日本全国に再確認されれば、消費量も少しずつ増えていくのではないか。
 これは鳴門巻き製造業者の組合(そういう団体があるのかよくは知らないけれど)が主体的な立場で検討し、ラーメン屋を営む団体の集まりも巻き込んで取り組んでいただきたい大問題だと私は考えている。個人的には、写真にあるとおり最低1cmの厚さは欲しい(わざわざ写真を載せるほどのことでもないが)。この厚さが普及すれば鳴門巻きの消費量はいずれ今の倍になると、勝手に私は目論んでいる。
 メーカー側も更なる企業努力をして欲しい。赤白の二色だけでなく、例えば「鬼滅の刃」が話題になれば緑と黒にしたものを作るとか、ウクライナの平和を願って、その国旗を連想する黄色と青色なども考えるとか、アイデアはいろいろと出てくるはずだ。黄身が二つの卵が販売されていることからヒントを得て、渦巻を二つ入れた楕円形の形のプレミアム商品を製造しても悪くない。
 Why Japanese people!?」の厚切りジェイソンを起用して、鳴門巻きの厚切り運動を展開していってもいいのではないか? 川柳というやり方で何か貢献できるなら、微力ながら私がお手伝いすること(「鳴門巻き川柳」の選者など)に吝かではない。
 以上、悪意はなく冗談を含んだ提案でした。



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バカバカしくも半分マジメな鳴門巻き改革試論”にコメントをどうぞ

  1. くみ on 2023年1月12日 at 10:56 AM :

    今日は〜☀
    今日もこちら(愛知県豊橋市)は良い天気、あったかです。
    鳴門巻 ウンウン、と頷きながら読ませていただきました。
    我が家ては年末の年越しそばに 彩りでいれます。雑煮には紅白の蒲鉾と交互にいれたりします。賞味期限をみながら、せっせとたべます。
    実は鳴門巻については なくてもいいかな?と思ったところでしたので、ちょっと考え直そうかと…( ◜‿◝ )♡

  2. 徳永楽遥 on 2023年1月13日 at 4:51 PM :

     三上節、大全開。読後感、大爽快。鳴門巻き宗匠、大期待!

    • 三上 博史 on 2023年1月13日 at 8:11 PM :

       楽遥さん、ありがとうございます。
       鳴門巻きのために今後も頑張ります。応援してください。

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