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 オーストリアの著名な動物行動学者にコンラート・ローレンツ(1903-1989)という人がいて、「ソロモンの指環」などの一般書を読んだ方は多いのではないかと思う。動物行動の観察から得た「刷り込み」理論の知見は有名であり、ノーベル医学・生理学賞も受賞している。いろいろな種類の動物を放し飼いして観察するのはよく知られた話しで、我が子が誕生して子育てをする際、子供の安全を考えて動物達ではなく子供の方を逆に檻へ入れて育てたという逸話が残っている。
 さてこの学者の研究業績を日本で紹介した方が日高敏隆(1930-2009)という京大教授の方だった。だいぶ前だが、テレビ番組の「徹子の部屋」にゲスト出演された時の話しがおもしろかった。人類は農耕生活以前に狩猟生活を長くしていた。日高さんは、その習性の名残から人間はものを食べる際に、目の前に食べ物を出されるより自らそれを探して食べた方がきっと美味しく感じるのではないかと考えた。そのことを何と我が子で実験したのである。結果はそのとおりであった。お菓子を単に子の目の前に置くのではなくわざわざ何処かに隠して探させたら、いつも以上に喜んで我が子は口に頬張ったのである。ローレンツの子供を檻に入れて育てた逸話と同じぐらい日高さんの話しもおもしろおかしくて、ずっと記憶に残っていた。
 スイスの発達心理学者ジャン・ピアジェ(1896-1980)の本に、子供の「量」の概念に対する認識で、小さい子供は、量の多寡はそれを入れた器の形状の幅や奥行きよりまず高さに着目してその違いを認識するというようなことが書かれてあった。例えば、底の広いタンブラータイプのガラスコップと細身のガラスコップにそれぞれジュースを注ぐ。二つを並べてみて、量としてはタンブラーの方が多めに注いであることが大人の眼から見て一目瞭然だったとしても、子供は水面が高い細身のコップの方がジュースの量は多いと認識するらしい。
 精神分析で有名なオーストリアのジークムント・フロイト(1856-1939)の本に、子供の暗闇に対する恐怖心のことが書かれてあって、その恐怖心は手をつないでやることで収まるというような説明がなされていた。
 日高さんの話しは社会人になってから、ピアジェとフロイトの本を読んだのは大学時代の頃のことある。それからかなりの時間が経過して私も一児の娘の父親となったが、これらの記憶が頭の中にずっと残っていて、娘が保育園児の頃だったか私なりにふとこれらのことを実験したくなったのである。
 日高さんとピアジェの実験は、ある日ある時我が娘にも同様に試してみて、見事に同じ結果をもたらした。特に食べ物探しの実験は、居間の茶箪笥の抽斗に隠していたチョコレートを何とか見つけ出し、得意になって食べていた娘の顔を今でも憶えている。
 フロイトの話しは、娘が小学校高学年の頃、一泊二日の益子焼陶芸教室で偶然試すことができた。初日の陶芸が終わって別の父娘の家族と相部屋で寝泊まりした時、その家族の父親の鼾が凄まじいものであった。あらかじめそのことの断わりがあったので文句は言えなかったが、その地響きに娘はいつになっても眠れないようだった。当然私も眠れない。その時、フロイトの話しをふと思い出した。並んだ布団から親子がそれぞれ右手と左手を出してずっと握ってやった。フロイトの言うとおり娘は間もなく眠りに入った。三番目の検証実験の成功である。
 娘が長じてから、これらのことを話したら、実験台にされたことで些か憤慨していた。まっ、これは致し方ない。親の勝手な興味に付き合わされただけなのだから。
 以上3つの実験のうち食べ物探しとジュースのコップについては、現在2歳の孫娘が大きくなって何かの機会が出来たら再度挑戦してみたい気がしている。まっ、これも親(娘夫婦)が許してくれるかどうかの話しにかかってくるが。



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