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 これはニーチェの哲学書である。大学生の時にこれの文庫本を古本屋で買って読もうと試みた。ページを捲ってみたがほとんど何を書いてあるのか分からない。一応哲学専攻の学生だったので、ニーチェの思想がどういうものかの教科書的な知識はある程度持っていたが、いざその著書を読み始めると眠くなるどころか、それ以前に放り投げたくなるような感じだった。
 その後卒論だけを残して留年していた5年生の或る日、積んで置いた本の中から理由もなくこの本を取り出して再びページを捲ってみると、「人間は自分より下の者を憎んだりはしない。ただ軽蔑するだけだ」というような言葉に出合った。同書は箴言集なので、どこから読んでも構わないのだが、長い文章は手強い。取り敢えず短いものだけを拾い読みしていたのだが、件の言葉に出くわした時はテンションが急上昇した。確かにそのとおりであることが、じわりじわりと理解出来てきた。
 どういう人間でも構わないが、何かの理由で相手に対して憎いと思ったら、既に当の自分は負けなのである。自分より劣ると思う相手だったら見下すか無視するかだけのことだからである。人に対して憎しみの感情を抱いた時には、相手の方が上なのだから何故自分がその人を憎むのか冷静に自己分析する必要があるのだ。そこから己の劣等感も浮かび出て改めてそれを認識するというものである。
 大学卒業後に何度も引っ越しをしたので、その文庫本も今では何処かに行方不明となってしまったが、この言葉は座右の銘として今も私の心の中にある。座右の銘にしていたお陰で、人間関係で悩んでいた時にこの言葉を思い出して助けられたことが何度もある。自分に対して冷静になれる箴言なのである。
 「善悪の彼岸」から学んだものの記憶は今ではこれぐらいしかないが、それだけのことでも大きな成果だったと今でも思っている。

 

 



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