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このたび、1年以上ネットオークションに晒されたままだった久良伎翁の掛軸を落札しました。
実は、1年前に登場した時、同じ作者の別の達磨画賛の掛軸と俳諧の掛軸3本を同じ出品者から購入していました。その時落札しなかったものが、そのまま晒されたままに残っていたものです。
価格は1300円。1年前に落としてもよかったのですが、送料が1500円と不釣り合いだったので、その時の優先順位で後回しになっていました。
「誰も買わない川柳のお宝」、このままにするわけにも参りません。


書かれている歌は、
面壁のたるま十年二十年 三十にして立つは何もの
という和歌(へなづち)と達磨の絵。
これに類似した久良伎翁の掛軸ないしマクリは、朱雀洞文庫には、既に4点あります(購入しなかった理由のひとつ)。朱354、朱1690、朱2179、朱2614は、いずれも久良伎翁の達磨画賛で、同じ歌が揮毫されています。その表記は、
面壁のたるま十年二拾年 三拾にして立つは何物
のように少し違う場合がありますが、類似作品です。
いずれも「久良岐」の落款や箱書があり、この署名は、昭和3年以前である事が判っています。
特に朱1690の箱書には、「大正丙寅春」とあり、大正15年ということがわかっています。
おそらくこの度の作品も同時期のものと想像されます。
久良岐翁は、「書画会」を通して川柳文化振興の手段にもしました。
下谷から墨摺に来る姦ましさ    久良岐
の川柳作品は、大正8年、第10回健筆会において「雛妓五、六人墨をする」とメモ書きのある一句です。書画作品の頒布、贈呈を通して、川柳を広めています。
この度の掛軸の面白さは、箱書きの署名が「川柳久良岐」とあることと、歌の内容や文字の癖とともに久良伎翁の作品に間違いはないのですが、落款に「究奇楼」と署名している点です。この別号は、これまでの研究では、久良伎翁の号として認識されていませんでした。
「奇を究める」は、久良伎翁らしさの言葉。「楼」は、堂号につける文字であり、即興なのか、実際にその時代にある程度継続的に使われた号なのか興味深いものです。
「面壁の達磨」とは、御存じの通りの達磨大師の逸話。「面壁九年」というのが、元の言葉でしょう。さらに十年、二十年。そして三十年にして立ったのが、目の前の明治狂句を改革し、新川柳に結びつけた久良伎翁自身ではないでしょうか。
久良岐翁は、「へなづち」と称して狂態の和歌も作っていたのは、正岡子規の短歌改革の折、その下で手伝いをしていましたので、和歌作者としても知られていました。川柳中興以後は、川柳に全精力を注ぎ、今日の川柳の基礎を築いた恩人です。
その恩人のお宝が、たかが1300円+送料1500円で晒されているのは、なんとも言いようがありません。
価値の解らぬ時代になったということでしょう。

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