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 「平凡」の意味を国語辞書で調べると、『特別すぐれた所や変わった点が無い様子』(新明解国語辞典 第五版/三省堂)と説明されてあった。人間のことについての記述なら「特別すぐれた所」は何とか分かるが、「変わった点」は引っかかる。「平凡な人間」と称する人がいて、その人に「変わった点」が無いとはっきり言い切れるだろうか。人はそれぞれの人生を背負って生きている訳だから、その人生の過去を振り返ったり、将来を見通したりして「変わった点」が無いと断言することはできまい。波瀾万丈とまではいかないが、いくらかの高さの山あり、そこそこの深さの谷あり、といった登ったり下ったりの経験がある程度はあったことだろう、これからあることだろう。個性の無い人間など存在しない。
 物体や生き物に対しては「平凡」という言葉で形容することは許されることだが、それぞれに固有の名前を持っている人間に対して、平凡な人だと決めつけるのはおかしいことだと気づく。
 「無名戦士(Unknown soldier)の墓」という言葉がある。元々は戦場で発見された「身元不明の兵士(の死体)」を意味する軍事用語だったらしいが、身元不明でも名前は確かにある。無名でもその名前が分かれば、何とか遺族を捜して、それなりの丁寧な対応をすることが出来る訳である。無名は名無しではない。知られていない(Unknown)だけである。知られていない人を知ろうとすれば、その人の確かな生き方、個性が判明することだろう。
 人間は一人一人その名前を持った以上は、有名にはなれないかもしれないが平凡では生きられない。他人を平凡そうに思っても、その人の生き方をしっかり覗いて見れば、そんなことはないことが判る。自分を「平凡な人間です」と謙遜するような言い方は、言葉どおりには受け取れない。逆に何かあるのではないかと怪しく考えた方がいいのかもしれない。
 以上いろいろと書いてきたが、偉い人の名言みたいなものを引用して教訓的な話しをするやり方が嫌いなので、事実としてそれ以上それ以下でもないことを淡々と言いたかっただけなのである。

  平凡な生き方なんて無いこの世   博史

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