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 「ピーターの法則」という言葉を聞いたことがありますか?
 多分20年ぐらい前の頃だったと思うけど、私はどこかの新聞の記事でこの理論が紹介されているのを何気なく読み、すぐになるほどと納得した記憶がある。どのようなことなのかは、インターネットを開けばすぐ理解できる。南カルフォルニア大学教授のフローレンス・J・ピーター(1919-1990)という教育学者が唱えた理論で、私なりにその要諦を説明すると「世界は無能な人間に満ちて来る」という、組織の中で生きる人間についての社会科学的な法則である。ウィキペディアにはこう記されている。

  1. 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
  2. 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
  3. その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。

 平社員が係長に出世する。しかしその器でなければ無能の烙印を押される。烙印を押されなければ更に能力を発揮して課長に出世するが、ここで無能の烙印を押されればこれで終わる。さらに出世して部長になった人もそこで部長職を全う出来ず無能と宣告されればやはりそこで終わってしまう。組織の中の人間は昇任のステップを登っていくといずれは自分の器の限界に達する訳であり、人間はなかなか己の分を弁えようとせず、自分の器を超えた出世欲(かっこよく言えば向上心なのだが)があるから、結果的に全員が無能となるのである。
 私はサラリーマン時代に何人もの無能者を見てきた。何でみんな出世したがるのだろう。給料が上がると言っても、子だくさんの家庭とか我が子を私立大の医学部に入れて医者にさせたいとか、そういう経済的な事情があるならまだ分かるが、そうでもないのに昇任したがり給料が上がることを望む。そしてピーターの法則に基づいて無能者の烙印を押されてしまう。職場うつを発症する場合すらある。自分と向き合えばいいのにそれをせず、本当の自分、本当の能力を知らないままでいた所為もある。
 だいぶ前のことだが、ある市役所で課長の降格制度が出来たことが話題となった。部下として眺めていた課長職と実際に課長になった時の辛さのギャップに驚き悩み、やはり課長補佐あたりがいいと願い出て認められる制度である。もちろん給料も下がる。
 男と女の違いについて観察すると、やはり男の方が出世欲が強いのではないか。裏を返せば単細胞ということである。子宮という器を持っている女性の方が肝が据わっているようである。少なくとも私が観察した範囲内の話しではあるが…。
 政治家にも同じことが言えるだろう。町内会の会長から始まって市町村議会議員、都道府県議会議員、国会議員、更に何とか大臣に総理大臣へと昇り詰めていく。まさに器が大きくなっていくことを着実に要求される訳である。途中でこけてしまい新聞記事に載るような例が出てくることもよくある。あの元法務大臣夫妻もその典型だったのかもしれない。
 身の程を弁える、身の丈に合わせるなどと言うが、案外これができない。立身出世の望みはなかなか捨てきれない。男とは悲しい性(さが)である。出世欲に振り回された人間の末路の何と哀れなことか。当人は絶対にそのことを認めない。利己心ではなく人のため、会社のために頑張っているのだ、などと可哀そうなくらいに周りへ嘯き、自分をそう信じ込ませる。
 早めに頭を切り替えて、ピンチの時にはいつでも逃げ込めるような趣味の世界でも作っておけばいいのにそれをやっていない。酒などで気を紛らわすばかりで体を壊してしまう。下手なやり方である。傍観者にはその状況がよく見えてくる。
 組織とは無能人間の集まり、と言ったら勿論言い過ぎであるが、一面の真理を突いていることも忘れてはならない。自分はまだ成長している、これからも可能性があるのだと信じている若い時分はこの法則を理解して受け入れようとはしたがらないが、家庭を持って子育てするような頃になったら、頭のどこかの隅に取り敢えずでも入れておいた方がいい。きっと役に立つ。私がそうだった。

 

 

 



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