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 先月、午前にあったコーラスの練習の帰り、近所のラーメン店に寄って昼飯をとった。ここはチェーン店ではなく、脱サラした人が一念発起で数年前に始めた店で、特製スープを仕込んで作るので評判がよく結構客が入っている。
 カウンターみたいなところでいつもの野菜ラーメンの大盛を注文した。相変わらず美味い。平日の昼間だったのでそれほど混んではなく、スマホをいじりなが落ち着いて食べられた。
 支払いの時に、私が住んでいる町が配布した300円クーポンがあったのでこれを1万円札と一緒に出した。クーポンは、コロナで町内の飲食業が打撃を受けているのでこれを支援するために発行したものである。町内の全世帯に配布している。
 食べ終わって会計する時はパート社員と思しき女性がレジを打って、お釣りとレシートをくれた。そのレシートをちらっと見て、何か変だなぁと気づいた。しかし面倒くさいのでそのまま財布にしまって家に帰った。
 家で昼寝でもしようかと考えていたが、レシートのことが妙に気にかかり、もう一度財布から取り出して確認してみた。するとクーポンの300円が代金から値引きされていないではないか。やっぱりそうだったのか。道理で変な気持ちになったのである。
 これから昼寝の時間である。これも大切であるが、昼寝した後は散歩する時間がある。散歩しながら、このラーメン店に寄って事情を説明したら、たかが300円程度でも戻ってくるかもしれないと思った。これは無職年金生活者だから思いつく呑気な発想である。仕事をしている人間ならそんな暇はないだろう。
 そして昼寝してから予定どおり散歩に出て、店に行き返金してもらう行動に出た。その場でお釣りを確認しなかったから駄目ですと言われたら、素直に諦めようとも考えていた。
 店に着くと店主がいて、事情を話すと速やかに返金しようとした。しかしさきほどのパートの方が出てきて、それは間違っていませんときっぱり言った。3人でレシートを確認してみる。
 確かに間違っていなかった。1万円を出したが、店としてはクーポンと合わせて10,300円を預かったことにして、レシートはそのように精算していたのである。私の方は、ラーメン代に対する300円の値引きがないと端から思い込んでしまっていたのだ。10,300円の数字は完全に見落とし、10,000円と勘違いしていた。私は素直に謝った。少しだけ言い訳すると、ファミレスのような分かりやすいレシートだとこうはならなかったと思う。
 さて、店を出てこの思い込みのことについて考えながらふと気がついた。これって振込め詐欺と同じ心理的メカニズムではないか。振り込め詐欺に引っ掛かってしまう人間の思い込みの心理というのは決して他人事ではない。高齢者だから騙されやすいということでもない。思い込みをして慌てる。慌てるとさらに思い込みも強くなる。まさに悪循環。こんな間違いに年齢は関係ない。
 今回のことで改めて思い込みの怖さを経験した次第である。いい教訓になった。

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