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 舟木一夫のヒット曲に「高校三年生」というのがあるが、私の人生には「大学5年生」という経験がある。自分の過去を振り返って、この1年間が無駄だったかそうでなかったかと、折にふれて考えることがあった。
 大学4年の時に、このまま卒業することにどうしても自分が納得できず、卒論だけを残して1年間自主留年をすることに決めた。気持ちを新たにしようと下宿先を変えることを考え、神奈川の方まで下見に行ったこともあったが、結局は引っ越ししなかった。1年間、昼間にアルバイトをしながら、四畳半の下宿で深夜から夜明け近くまで本を読む以外はほとんど何もしないような生活を続けていた。これがその後の私の人生で無駄だったかどうか。
 就職して同期の大卒仲間と仕事し始めたが、年齢は同じだった。みんな1浪していたので偶々そうだったのである。だから大した違和感はなかったが、もし4年で卒業して入職していたなら1年先輩になっていたはずで、昇給時期などの待遇面も変わっていたのではないか。生涯賃金も1年分多くなるだろうから老後の年金受給額にも多少は影響するだろう、などとふと思ったりしたものだった。
 でも齢を重ねて半生を振り返ってみると、大学5年という1年間はそれなりに意味があったものだと受け止めるようになっていた。1年間、心の中ではもがき苦しんでいたところも確かにあったのである。それは意味のある人生の通過点であった。あの1年間で経験した読書は生涯の糧になっている。その後の人生の支えになった本に出合えたことは心の財産と呼べるだろう。
 人生経験にはどれ一つとっても無駄なものはない。無意味なものは存在しない。あの時の大学5年生から40数年を経ているが、改めてそう感じている。

 

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