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   ビールの苦さと旨さ

                            川柳作家 三上 博史

 子供の頃、父親が飲んでいるビールの味が知りたくて一口飲んだことがある。あまりの苦さに、こんなものがよく飲めるなと驚いたものだった。
 大学生になると、コンパがあればビールを飲まされた。昔はアルハラ(アルコールハラスメント)などという言葉はなかった。酒の味を覚えるように鍛えられることは、大人への階段の第一歩であったのである。
 気がつけばビールの旨さが少しずつ分かるようになり、夜中のラーメン屋へ入って、ラーメンではなくビールと何かのツマミを頼んでいる自分に気がつく。缶ビールを自販機で買い求め、下宿で独りの酔いを楽しむこともあった。
 それから20年近くの歳月を経て、私が茶の間で晩酌していていると、まだ小学生だった娘がビールグラスに口をつけた。すかさず「苦い」と言った。図らずも子供の頃の私と同じことをやらかした訳である。
 その娘も大学生になり、体育会に所属して武道をやり始めた。先輩に鍛えられてビールも飲めるようになった。夏休みで帰省した際に私の飲んでいた缶ビールを取り上げて、一口、二口飲んだ。「暑い日はビールに限るね」などと宣わった。
 子供は成長する。私も私の娘もそうだった。ビールの苦さは旨さへといつか潮目が変わる。変われば飲兵衛の仲間入りである。

  大人へとビールの旨さ知る真夏
              博史

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