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 西暦20XX年、世界は地球温暖化の進行をなかなか阻止できずにいた。そんな状況の中でとんでもない発見が世界を驚かせた。
 宇宙物理学はブラックホールやニュートリノなど宇宙の果てや、そこから飛んで来るものを追い求めて研究していたが、そんな遠くのことではなく太陽系の中に新たな惑星の存在を発見したのである。それは、まさに灯台下暗し。太陽を挟んだ地球の反対側に地球と同じ大きさ、地球と同じスビートで太陽の周りを公転し、自転していたのである。常に太陽の陰に隠れて回っていたのが盲点だった。
 さて、熱帯のみならず温帯の夏の最高気温も40℃を軽く超える日々が当たり前のように続く気候となっていた。冷房のための電力もフル稼働であるが、発電のための化石燃料やウラン資源も枯渇してきた。そして地球外へそれらを求めるために、その新たなに発見された惑星へ巨大宇宙船を飛ばして調査する計画が進められた。その新惑星に、資源が枯渇しかけている地球に必要なエネルギー資源があるのかどうか探査することになったのである。
 宇宙船は日本が開発することになり、半年をかけて新惑星へ向かって旅立ち、1年の調査を経て地球に帰還する計画が立てられた。長い旅路である。道中の人間関係がこじれると面倒なので、太郎、花子、次郎の3人の兄弟が選ばれた。いずれも若くて頭脳明晰、しかも仲がよい。
 滞りなく発射された宇宙船は無事新惑星に到着した。そこは地球とほとんど変わらない世界だった。地軸も地球と同じ角度で傾いており、地球と同じような気候だった。海も地球と同じように広がっている。動物たちも地球と同じような進化を辿った生態で暮らしていた。一つだけ違うことはヒト(人類)に相当する生き物が見当たらないことである。類人猿みたいな動物はいるが、ホモサピエンスはいなさそうだった。
 人類がいないと文明も文化も存在しない。地球のように資源が枯渇するようなことはあり得ない。そもそも資源という概念がこの新惑星では無意味なのである。資源とは地球人にとっての資源なのだ。
 三兄弟は仲良く生活しながら調査を続けた。そして大きな金鉱山を発見した。隣には同じく大きな銀鉱山があった。ここから莫大な量の金銀を精錬して地球へ運んで行ったら、金と銀の取引相場は物凄く暴落するのではないか、などと3人で想像した。化石燃料はどうだろうか。何か所もボーリングすれば、石炭や石油が発見されるかもしれない。
 入手可能な資源は地球へどんどん運んでいく。地球で要らなくなった核燃料廃棄物や温暖化の元凶である二酸化炭素は逆にこちらへ持ち込んで埋め込んでしまえばいい。
 あまりに地球と似ているもう一つの地球の活用方法について、三兄弟がいろいろ議論を重ねると夢と希望が膨らんできた。地球に帰還したら、速やかに報告して運搬方法の検討を考えなければいけないだろう。ワクワクする気持ちで3人の胸が高鳴る。
 1年間の調査を終わらせ、3人はその結果をまとめて地球への帰還の準備を始めた。そんな時に、もう一つの地球を支配している神様が3人の前に現れた。
 神様は、3人に対してこう言った。
「私は数十億年前、君たちが住んでいる地球とこの惑星、もう一つの地球を造った。地球には生物が進化していずれ人類が誕生し、文明や文化が生まれて進展していく。そしてその行き着く先は、環境破壊や戦争で荒れ果てた世界になることを予見していた。そうなって地球が破滅するだろうから、私は人類が存在しないもう一つの地球を造っておいたのだ。もう一つの地球は平和で安寧な状態が続いている。これは永遠のものであろう。地球から人類がやって来てそれを汚さないでもらいたい。」
 3人は神様の言ったことを妙に納得した。そして地球へ帰還し、もう一つの地球には人類が自由に使える資源などは何も存在しないことにして報告書を提出した。〈この物語は続くかもしれないし、終わりになるかもしれない〉



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