定形以外の作句に挑戦しよう
~五七五を離れて、自分のリズムを見つける~
川柳といえば、まず思い浮かぶのが「五・七・五」です。十七音の定型は、日本語のリズムに馴染みやすく、長い年月をかけて磨かれてきた川柳の基本形です。しかし、川柳は必ず五七五でなければならないわけではありません。表現したい内容によっては、「七五五」「八四五」「八九」「九八」など、五七五とは異なる音数を選ぶことで、言葉がより自然に、より強く響くことがあります。大切なのは、単に定型を崩すことではありません。一句の内容に最もふさわしいリズムを選ぶこと。そこに、定形以外の作句へ挑戦する面白さがあります。
■ 七五五――上句を伸ばして勢いをつくる
七五五は、最初の部分を七音にすることで、情景や状況を少し詳しく提示できます。そのあとを五音、五音と運ぶため、後半には軽快なリズムが生まれます。
〈例句〉
古希を過ぎても 夢を見る まだ歩く
風にまかせて 道を行く 明日へ行く
五七五とは違い、最初に少し長く語ることで、一句の世界へ読者を引き込む力が生まれます。
■ 八四五――長短の落差で「間」をつくる
八四五は、八音から四音へ一気に短くなるところに特徴があります。長く語ったあと、四音でふっと切る。その「間」が一句のアクセントになります。そして最後の五音でしっかり着地させます。
〈例句〉
定年過ぎても なお夢 追いかける
雨上がりの街 傘置く 虹を待つ
中ほどの四音をどのように生かすかがポイントです。短い言葉を置くことで、そこに強調や余韻を生むことができます。
■ 八九――二つの言葉の塊をぶつける
川柳は必ず三つに区切らなければならないわけではありません。八九のように二つの部分から成る句では、前半と後半が向き合うような構造になります。前半で状況を提示し、後半で転換したり、心情を明らかにしたりすることができます。
〈例句〉
定年過ぎても 明日は余白のまま
朝焼け見上げて 明日への希望湧く
二つの大きな言葉の塊が呼応するため、五七五とは違った力強いリズムが生まれます。
■ 九八――前半で語り、後半で余韻を残す
九八は、前半九音で十分に思いを語り、後半八音で情景や結論へつなぐ形です。会話や心のつぶやきに近い自然な呼吸を生かすことができます。
〈例句〉
ありがとうも言えず 父の背が遠く
さよならさえ言えず 母の手を離す
前半に感情を置き、後半に具体的な映像を置くことで、読後に余韻を残す句になります。
■ なぜ定形以外に挑戦するのか
川柳を作っていると、「この言葉をどうしても残したい」「五音に収めようとすると意味が変わってしまう」「七音にするために余計な言葉を足してしまった」ということがあります。そんなときは、一度五七五という枠から離れてみるのも一つの方法です。まず、自分が本当に言いたいことを自然な日本語で書いてみます。そして声に出して読んでみましょう。そこに自然な呼吸や心地よいリズムがあれば、それがその句にふさわしい形なのかもしれません。
■ 定形以外の句ほど声に出してみよう
五七五には、もともと日本人が親しんできた安定したリズムがあります。一方、七五五、八四五、八九、九八などには、その保証がありません。だからこそ、声に出して読むことが大切です。どこで息をするのか。どの言葉に力が入るのか。どこで「間」を取るのか。読み終えたあとに余韻が残るか。耳で確かめながら推敲することで、数字だけでは分からない一句のリズムが見えてきます。
■ まず五七五を知り、それから飛び出そう
もちろん、定形以外の句を詠むからといって、五七五を軽視してよいわけではありません。むしろ逆です。まず五七五を十分に学び、そのリズムを身体で覚える。そのうえで、「この一句は五七五ではない方がいい」と判断することが大切です。基本を知っているからこそ、基本から外れた表現が生きてきます。
■ 五七五は川柳の基本であり「故郷」です
五七五は川柳を縛るためのものではありません。川柳を育ててきた大切な「故郷」です。しかし、故郷を持つ人が旅に出られるように、川柳も五七五という故郷から時には旅立ってみてもよいのではないでしょうか。いつもの五七五では十分に表現できない発想に出会ったら、ぜひ違うリズムを試してみてください。「この句は、どんなリズムで詠めば一番輝くだろう」そう考えること自体が、川柳の表現力を磨くことにつながります。定形を知る。定形を磨く。そして、ときには定形を飛び出す。その先に、今まで気づかなかった川柳の新しい世界が待っています。今回は定型以外の川柳についてまとめてみました。いろいろな破調句に挑戦して川柳の幅を広げ川柳の世界を広げましょう。
柳山
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