私が生まれ育って現在も暮らしている町は、他所と比べて税金がいくらか安い。それは毎年納める地方税のうち、都市計画税が平成25年度から徴収されなくなったからである。
地方税というと、住民税や固定資産税などをすぐに思い起こすだろうが、固定資産税の方には、それと抱き合わせで都市計画税も併せて徴収されている。一般的に都市計画税も含まれて固定資産税と呼ぶ場合が多いので、このステマのような税金に気がつかない人もいるのではないか。あまり目立たない税金だと言える。平均的な収入の家庭では、その比率は前者の数%から10数%程度であろうか。
私は税金の専門家ではないのでざっくりとしたことしか言えないが、その程度の比率の金額でも納税しなくて済むということは、家計をやり繰りする上で決して馬鹿にならないのではないか。我が町の住民なら、平均的な所得の持ち家世帯で年に1万や2万そこらの経済的負担がなくなったことになる。Copiltに尋ねたら、全国の自治体の約1/3がこれに該当するという。栃木県内では私の住んでいる町だけのようである。
町の面積のほぼすべてが平地で自然災害が少なく工業団地がいくつもあるので、そこで操業している工場の法人住民税や固定資産税などで町の財政も結構潤っていると思う。地方自治体の財政健全化の指標となる公債比率(支出に占める借金返済の割合)も小さくて、全国的に見ても上位に位置していると聞いている。もっとも数年前に役場庁舎の建て替えがあったので、その数字も少しは悪化したかもしれない。国の補助金もあったが、積立金のほかに借金でも賄ったはずである。
さて税金が安くなった当時の役場のウェブサイトには、我が町は都市計画税を徴収していません、とトップページに大きくバナーを表示するようになっていた(現在はもう削除している)。これをたまたま見つけた際、何かもの足りないなぁとすぐに感じた。バナーをクリックしても大した情報が出てこないのである。
少子高齢化でどこの自治体も人口減少が大きな問題となっている。少子化(自然増)対策には限界がある。転入者を増やして社会増を目指そうとすると、日本列島の限られた人口の中でのパイの奪い合いみたいな現象も起きてくる。住み良い自治体ランキングの上位になれば、それを売り込みのツールにして居住者を呼び込むことも出来るだろう。実際にそういうところがいくつも出てきている。
当時の私は職場でホームページ関係の業務に関わっていたので、我が町のインターネットによる広報がこの程度の謳い文句では、人口減対策や地域活性化の一助としてかなりもの足りないと即座に判定した。もし私が町役場の広報担当職員だったら、モデルケースを例示した案を上司に提出したことだろう。
例えば一般的な家庭として、夫婦と就学中の子供が2人の4人家族を想定してみる。40代でサラリーマンの父親の年収が約500万、同じく40代の母親がパートで働いていて約150万。50坪程度の土地に2階建ての持ち家に住み、毎月のローンを返済しながら暮らしている。仮にそういう家庭があったとした場合、毎年納めていた固定資産税と都市計画税がいくらと、大まかにでもシミュレーションした数字を示す。平成25年度からその都市計画税の負担分(具体的な数字をもちろん示す)が不要となります、とホームぺージで紹介する。
他と比べて税金が確実に安くて暮らしやすい町ですよ、と呼びかけるようにPRしたら、かなり印象が変わるのではないか。インパクトが違うはずである。アパート暮らしをしていて、どこかに引っ越して家を建ててみようかと検討している夫婦がいたとしたら、それを目にしてら少しは気になってくるのではないか。その町へ引っ越そうという考えも生まれるかもしれない。うーん、そこら辺りを役場の方も少しイメージしながら、このメリットを活かしたホームページのコンテンツ作りを考えてもらいたかった。
お金に対する意識というのは結構いい加減なものである。確定申告後の還付金など、誰でもちょっと得したような気持ちになって、通帳に振り込まれた数字を眺めるのではないか。実際の絡繰りは1銭もそうではないのに、どうしてもそのように思い込んでしまう。サラリーマンの年末調整の戻りも然りである。何となく朝三暮四の故事を思い出す。人間もそこら辺りは猿から進化してきた思考回路の痕跡が、脳味噌の片隅にまだ残って機能しているのかもしれない。
20数年前の年金改革で保険料がぐーんと上がったことがあった。当時の私は給与の明細を眺めて、確かにそのとおり高くなったのを実感したものだった。マクロ経済スライドの導入などが話題となったが、将来の年金財政がさらに厳しくなるのではないかという陰口も囁かれた。超高齢化社会を既に迎えていたのだから仕方のないことなのだろうが、そうは言っても国民感情としては、保険料アップに対して被害者意識みたいなものを抱きたくなる。庶民感覚とはそんなものである。
今盛んに議論されている給付付き税額控除の制度については、税金が確実に安くなったという実感を持たせることが大事である。給付は現金が振り込まれるのでその有り難味を素直に受け取ることができる。控除の方はその実感がスルーされてしまいかねない。従前と比べて一体どれくらい税金が安くなるのかの新旧比較を何らかの方法で具体的にきちんと明示した方がいいだろう。
そもそも給与明細や源泉徴収票に対して、突き詰めて理解しようと思うサラリーマンは少ないのではないか。大方はこんなものだろうと納得してお終いになる。新たな制度が出来上がったら、はっきりと分かってもらう損得の数字を見せないと、国が頑張って作り上げた政策をなかなか評価してくれないことだろう。
低所得者への再分配が強化されて格差が是正され、消費を刺激して経済活性化につながる。これによって社会がよくなっていく。この謳い文句から引き出される理論的な数値とは別次元で、人間の経済行動を決める欲得の心理や倫理観にまで踏み込んだ分かり易い議論に基づいて、俗っぽく所得控除のお得感をお見せしてもらいたいものである、朝三暮四の頭を諭すようにして説明しないと、何につけ諦めモードのスイッチを入れたがる国民などは素直に褒めてくれないだろう。
これだけ確実に所得税、社会保険料、年金の掛金を支払ったのだという意識をそもそも持たせることが大切だろう。数年前の自民党の総裁選で年末調整の廃止(国民がすべて確定申告する)を訴えた候補者がいたが、共感した者も案外多かったのではないか。もしそれが実現したら膨大な事務量が発生するだろうが、社会の一員、納税者としての意識をしっかり国民に植え付けられるだろう。
とまあ、うだうだと書いてきたが、半分隠居した年金受給者になって10年近くなる。既に現役という当事者から離れて外野の立場の人間になっているが、時間に余裕があるのでじっくり政治経済や社会を観察してみようかという好奇心は衰えていない。むしろ興味津々である。自分には直接関係ない話題についても、今まで見えてこなかったものが見えてきてそれなりに世の中は面白い。
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