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 大学受験の勉強のうち、国語というのは特殊な位置にある教科だと思う。他の教科は、文科系・理科系を問わず、とりあえず学習しないと話しにならない。しかし日本語自体を扱う国語となるとちょっと様子が違う。
 日常生活におけるコミュニケーションの手段として、日本国民なら日々日本語を使用している。どんな難解な文章でも、あるいはあまりにも砕けた会話でも、他所の国の言葉ではないのでチンプンカンプン、全く理解不能というケースは有り得ないだろう。自分が生まれてから自然に国語としての日本語を学んでいる訳である。学校の授業以外でも暮らしの中で国語をいつも学習しているとすら言える。
 私は大学受験の対策として、当時の現代国語(現国)の科目をあまり勉強した記憶がない。難しい文章を読んで少しひねくれた設問に答える。これはコツとテクニックの世界だと自分なりに心得たからである。だから、そういった試験に日々馴染んでいれば、改めて学び直すようなものはあまりない。単語の意味の理解とか漢字の書き取り・読み取りとかも例外ではない。要するに自分の身の回りに散らばっている日本語の文章を丁寧に扱うことを怠らなければ、何が試験問題に出されてもある程度は答えられて何とかクリアできるのである。
 高校1年生の頃はあまり読書をしていなかったが、これを改めてなるべく本を読んで日本語の文章に親しもうとすると、自ずと活字に馴らされてくる。そうなると、現国は改まってわざわざ勉強するほどのものではないという認識に変わってくる。実際にそのとおりだった。この指示代名詞は何をさしているのか、著者の言いたいことはどこにあるのか、そういった文章問題の設問は概ねパターンが決まってくる。そのパターンに迎合する(変な言い方だが)ように正解を推理していけば大体は当たってくる。著者の考えにはそもそも賛同できない、などと批判的な精神を見せてしまうとこれはアウト。正解と高い点数は得られない。
 古典(古文・漢文)は、憶えるべきものの範囲が決まっているので、文法や単語などをしっかり押さえておけば、後は量をこなす世界である。日々何問も問題に向き合って解いていく。そうすると過去の問題が再び現れることもあって、しめた!と内心思ってしまう。その程度で何とかなるものである。
 今の若者が現国に相当する科目で苦労しているのは、PCやスマホの所為である。活字という情報が巷に溢れ飽和状態となっている。他人の書いた文章を一々丁寧に読む余裕などない。そんなやり方をするのは時代錯誤的である。言語情報はわざわざ入手するものではなく、とりあえず仕方なく消化するものである。自分のキャパを超えないように消化するから、眼から入った文字情報はほとんどが排泄されるようにして忘れ去られる。ファスト社会なので、ハンバーガーもSNSも同じレベルのものである。振り返ってじっくり考え直すようなスタイルはほとんどが野暮なことなのだろう。だから、一度スクロールした画面を元に戻すようなことはあまりしたがらない。とりあえずさっさと前進するのみ。これで日々の知識を処理する。
 そんな時代に、おもしろくもない文章をじっくり読み込むなんて真っ平ご免。時間が勿体ない。だから、国語の授業は退屈であり、試験に対峙し格闘することは苦痛なのである。飽食の時代では、食べ物を平気で粗末に扱うが、言葉だって無神経に食い散らかして何とも感じない。
 デジタル情報に対してダイエッみたいなことを試みれば、情報量は一気に減らされ、限られた紙媒体だけを読まざるを得ない。そうすると時間にも余裕ができて、言葉に対して丁寧に向き合うことになってくるのではないか。活字に飢えるような心境になってくるかもしれない。もちろん言葉という存在に対して敏感になってくる。知的好奇心に駆られて、何か為になるような本を無性に読みたいという衝動に駆られることもあるだろう。そういう経験を積んでいくと、現代国語の問題を出されても案外すらすら解けるようになるのではないか。
 ネット以前のアナログ時代に育った私とは真逆な勉強法になる。私のような世代から眺めると、今の世の中は情報について、まず量的におかしい。だから質的にも無理が出てくる。情報のSDGsということを提言したいものだ。

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