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(写真はイメージです)

川柳忌の歴史

~柄井川柳を偲び、二百六十年の伝統を未来へ~

今日9月23日は「川柳忌」です。2026年9月23日、東京・蔵前の龍宝寺で川柳忌が営まれ私も初代川柳・柄井八右衛門の法要に参加しました。そして法要後の句会にも参加しました。今年は会場への出席者54名、投句参加181名、合わせて235名が参加する盛大な川柳忌となりました。全国の川柳人が、川柳文芸の祖・柄井川柳を偲び、今日まで受け継がれてきた五・七・五の歴史に思いを寄せる一日です。

■なぜ9月23日が「川柳忌」なのか

「川柳忌」は、川柳文芸の祖とされる初代・柄井川柳の命日に由来します。柄井川柳は享保3年(1718)に生まれ、寛政2年(1790)9月23日に没しました。通称は八右衛門。江戸・浅草の龍宝寺門前の名主を務める一方、前句付の点者として活躍しました。宝暦7年(1757)から前句付の「万句合」を興行し、その優れた選句眼によって多くの人々を引きつけました。(宝暦7年の万句合の様子をイメージした写真イラストを冒頭に掲載しました)やがて川柳が選んだ句は「川柳点」と呼ばれるようになります。さらに、その付句が前句から離れて独立した短詩として鑑賞されるようになり、後世、選者の雅号であった「川柳」が文芸そのものの名称となっていきました。

■『誹風柳多留』と川柳の誕生

川柳史を語るうえで欠かすことのできない存在が『誹風柳多留』です。明和2年(1765)、柄井川柳が選んだ前句付の秀句を集めた『誹風柳多留』初編が刊行されました。そこに収められた句には、江戸庶民の暮らし、人情、夫婦、親子、武士や商人の姿、世相への風刺などが生き生きと描かれています。つまり川柳は、最初から単なる「面白い五・七・五」ではありませんでした。人間を見つめ、暮らしを見つめ、時代を見つめる文芸だったのです。『柳多留』の刊行は前句付の人気をさらに高め、やがて付句が独立した文芸へ発展していく大きな契機となりました。

■龍宝寺――川柳の聖地

川柳忌の舞台となるのが、東京都台東区蔵前にある天台宗の龍宝寺です。柄井家は龍宝寺門前と深い関係を持ち、柄井川柳自身もこの地域の名主を務めました。そして現在、龍宝寺には初代柄井川柳の墓があります。その墓は東京都指定旧跡となっており、龍宝寺は「川柳寺」とも呼ばれています。墓石には初代川柳夫妻などの戒名が刻まれ、その後方には明治22年(1889)建立の「元祖川柳翁一百回紀念標」も残されています。川柳を愛する者にとって龍宝寺は、単なる墓所ではありません。今日の川柳へと続く源流を実際に感じることのできる場所なのです。

■9月23日に受け継がれる追善の心

柄井川柳の命日である9月23日には、毎年龍宝寺で川柳忌が行われています。現在も川柳人が集まり、柄井川柳を偲ぶとともに句を詠み、川柳という文芸を次代へ受け渡しています。川柳忌が興味深いのは、単なる「偉人の法要」ではないところでしょう。川柳人は川柳人を、川柳を詠むことによって偲ぶ。そこに川柳忌ならではの意味があります。二百年以上前に生きた柄井川柳と、現代の川柳人とが、五・七・五を通して同じ場所でつながるのです。

■「木枯や跡で芽を吹け川柳」

柄井川柳の辞世として、後世に伝えられている句があります。『木枯や跡で芽を吹け川柳』これは柄井川柳の辞世の句として伝えられています。柄井川柳が世を去ってから二百三十年以上。その後も川柳は途絶えることなく、明治、大正、昭和、平成、令和へと受け継がれてきました。社会風刺を詠む人がいる。人生を詠む人がいる。家族を詠む人がいる。恋を詠む人がいる。そして笑いを詠む人がいる。時代が変わっても、人間を見つめる川柳の眼差しは変わりません。

■2026年の川柳忌――235名がつないだ一本の糸

そして今日、2026年9月23日。蔵前・龍宝寺に54名の柳人が集まり、さらに181名が投句で参加しました。参加者合計235名。柄井川柳の時代には、インターネットもスマートフォンもありません。しかし、人間の喜怒哀楽そのものは今と大きく変わらなかったのではないでしょうか。江戸の町で人々が句を寄せた「万句合」と、現代の私たちが参加する川柳大会。その間には二百数十年という歳月があります。しかし、その両者を結んでいる一本の糸があります。それが、「人間を五・七・五で詠む」という川柳の精神です。川柳忌とは、過去を偲ぶだけの日ではありません。柄井川柳から渡された一本の襷を、今を生きる川柳人が受け取り、さらに次の世代へ渡していく日でもあるのです。二百数十年前に蒔かれた一粒の種は、今も日本各地で芽を吹いています。そして今日、龍宝寺に集った人々、全国から句を寄せた人々もまた、その新しい芽の一つなのです川柳忌、それは川柳の過去を偲び、現在を確かめ、未来へ五・七・五を手渡す日なのです。

柳山

 

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