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印象吟を楽しもう

― 発想を飛ばし、あなただけの五七五を ―

一枚の写真、一枚の絵を見て川柳を詠む「印象吟」。題詠では「夢」「心」「道」など、与えられた言葉から発想を広げていきます。それに対して印象吟には言葉の指定がありません。目の前にある一枚の絵や写真を見て、そこから感じたこと、想像したことを五七五にしていきます。同じ一枚を見ても、百人いれば百通りの見方があります。そこに印象吟の面白さがあります。

印象吟は「見たもの」を詠むだけではない

 たとえば、夕暮れの公園に一脚のベンチが置かれている写真があったとします。「夕暮れの公園にベンチがある」これだけでは写真の説明になってしまいます。ところが、そのベンチを見て、

「誰かを待っているのではないか」
「昨日まで二人で座っていたのではないか」
「ここで別れ話をした人がいるかもしれない」
「ベンチ自身が誰かを待っているのかもしれない」

 と想像すると、写真の向こう側に物語が生まれてきます。印象吟で大切なのは、見えているものより、そこから何が見えてきたかです。

「第一印象」の、その先へ行ってみよう

 印象吟で気をつけたいのが「類想」です。美しい桜を見れば「春」「花見」「別れ」「入学」、夕焼けを見れば「故郷」「母」「思い出」、赤ちゃんを見れば「未来」「希望」「笑顔」。もちろん、こうした発想が悪いわけではありません。しかし、多くの人が最初に思いつくことは、ほかの人も思いつく可能性があります。

 そこで私は、最初に浮かんだ発想をすぐ一句にせず、もう少し遊んでみることをお勧めします。「この写真から、ほかの人は何を詠むだろう」そう考えてから、「では、自分はどこを見るか」と問い直してみるのです。

主役ではなく脇役を見る。
人物ではなく影を見る。
現在ではなく十年前を想像する。
写真の一秒後を考える。
写っていない人物を登場させる。

これだけでも発想は大きく変わります。

写真の外側まで想像してみる

 印象吟には「正解」がありません。場合によっては自由吟に近い発想の句もできるかもしれません。人物が笑っている写真を見て、「幸福」と詠んでもいいし、「別れを隠している笑顔」と想像してもいい。古びた靴を見て、その靴の持ち主の人生を想像してもいいでしょう。さらに面白いのは、物に心を持たせる方法です。いわゆる「擬人法」ですね。物が主役となっている写真やイラストではこn「擬人法」が効果的な場合がかなりあります。例えば、「傘が雨を待っている」「古時計が家族を見守ってきた」「空席の椅子が主人の帰りを待っている」などです。そんなふうに視点を少しずらすだけで、一枚の絵から小さな物語が立ち上がります。川柳は十七音という短い文芸です。

 だからこそ、すべてを説明する必要はありません。むしろ、読者が「このあと何があったのだろう」と想像できる余白を残した一句には、大きな魅力があります。

発想力を鍛える最高のトレーニング

 実は、印象吟は川柳の発想力を鍛えるうえで、とても効果的な練習方法なのです。一枚の写真を前にしたら、すぐ一句だけ作るのではなく、まず十個くらいの言葉や場面を書き出してみてください。そして、その中から「これは少し人と違うぞ」という発想を拾って一句にする。さらに、

「もう一歩ひねれないか」
「説明になっていないか」
「写真に写っているものをそのまま言っていないか」
「自分にしか見えない物語になっているか」

と推敲してみます。この習慣は、印象吟だけでなく題詠や自由吟にも必ず生きてきます。

一枚の絵は、五七五への扉

 印象吟の魅力は、何といっても自由な発想ができることです。絵の中へ入ってもいい。絵の外へ飛び出してもいい。過去へ行っても未来へ行ってもいい。笑ってもいいし、泣いてもいい。ちょっと意地悪な見方をしてもいい。大切なのは「何が描かれているか」ではなく、「あなたには何が見えたか」なのです。

 上手に詠もうと構えすぎる必要はありません。まず一枚の写真や絵を眺めてください。そして第一印象が浮かんだら、そこで終わらず、もう一度眺めてみましょう。「ほかに何か見えないかな」その小さな問いから、誰にも思いつかなかった一句が生まれるかもしれません。一枚の絵から広がる無限の世界。さあ、あなたも今日から印象吟を楽しんでみませんか。あなたにしか見えない五七五が、きっとそこに待っています。

柳山

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