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吟行を楽しもう

― 歩けば五七五の種が見えてくる ―

 川柳を続けていると、いつの間にか発想が似通ってくることがあります。そんなとき、ぜひ楽しんでいただきたいのが「吟行」です。吟行というと俳句の世界を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、川柳にとっても吟行は新しい発想を得るための絶好の機会です。

吟行とは何か?

 吟行とは、実際に街や自然、名所旧跡などを訪ね、そこで見たもの、聞いたもの、感じたことを素材に句を詠むことです。机に向かって想像だけで句を作るのとは違い、吟行には「現場」があります。風景があり、人がいて、音があり、匂いがあります。そして何より、そこに立った自分自身の心の動きがあります。

 たとえば古い商店街を歩けば、閉じたシャッター、店先で話す人、昔ながらの看板など、さまざまなものが目に入ります。

シャッターに昭和の声がまだ残る 柳山

 そんな一句も、実際にその場所を歩いたからこそ生まれるのではないでしょうか。

川柳の吟行は「人」を見る

 俳句の吟行では自然や季節が大切な素材になりますが、川柳ではそこに「人間」を加えてみましょう。公園なら、花だけを見るのではありません。ベンチで語り合う夫婦、犬に引っ張られている飼い主、夢中で遊ぶ子どもにも目を向けます。駅なら、電車だけでなく、発車寸前に走る人、改札口で誰かを待つ人、スマートフォンを見つめる人にもドラマがあります。

待ち人を見つけ改札春になる 柳山

 風景の中から人間の喜怒哀楽を拾い上げる。それが川柳ならではの吟行の面白さです。

五感を使って歩いてみよう

 吟行では「句を作らなければ」と構え過ぎないことも大切です。まず歩きましょう。見る。聞く。嗅ぐ。触れる。味わう。五感を働かせていると、普段なら見過ごしてしまうものが急に輝いて見える瞬間があります。そして「おや?」と思ったことをメモしておきます。それは完成した川柳でなくても構いません。

「赤い傘」「古い時計」「鳩を追う子」「店番の猫」「坂道で休む老夫婦」そんな短い言葉だけでも十分です。それが後になって一句へ育っていきます。

身近な場所でも吟行はできます

 吟行というと、有名な観光地へ出掛けなければならないと思われるかもしれません。そんなことはありません。近所の商店街、駅前、公園、スーパー、病院の待合室、バス停など、日常のあらゆる場所が吟行の舞台になります。むしろ川柳では、ごく普通の暮らしの中に面白い素材が隠れています。

特売日カートも少し急いでる 柳山

 こうした日常の小さな発見こそ、川柳の得意分野でしょう。

同じ風景から違う句が生まれる

 仲間との吟行には、もう一つ大きな楽しみがあります。同じ場所を歩き、同じ景色を見たはずなのに、出来上がった句はまったく違います。ある人は建物を見る。ある人は歴史を見る。ある人はそこにいる人を見る。そしてある人は、自分自身の人生を重ねます。「そこを句にする!」仲間の句を聞いて驚くことがあります。この驚きこそ吟行の大きな収穫です。他人の視点に触れることで、自分の「川柳の目」も少しずつ広がっていきます。

写真を撮るだけでは終わらない

 スマホを持って吟行すると、つい写真をたくさん撮りたくなります。もちろん写真は後の推敲に役立ちます。しかし、写真だけに頼ってしまうと、その場で感じたものが薄れてしまうことがあります。写真には写らない風、音、匂い、会話、そして自分の感情があります。吟行ではカメラだけでなく、ぜひ「心のシャッター」も押してください。

吟行は川柳のマンネリを救ってくれる

 いつも同じ場所で、同じ生活の中だけで川柳を考えていると、どうしても発想の範囲が狭くなります。そんなときこそ外へ出てみましょう。一本違う道を歩くだけでも、新しい発見があります。知らない町へ行けば、さらに多くの刺激があります。吟行とは、単なる句作の方法ではありません。

【吟行は自分の中に新しい言葉を取り込む旅となる】

 そして何より、吟行は楽しいものです。仲間と歩き、笑い、食事をし、ときには寄り道をしながら一句を探す。その一日そのものが、川柳の思い出になります。さあ、手帳とペンを持って出掛けてみませんか。

あなたの家を一歩出たところから、もう吟行は始まっています。

 歩けば景色が変わり。
景色が変われば心が動き。
心が動けば、そこに新しい川柳が生まれる。

吟行で心もリフレッシュして新しい川柳の創作の旅にでましょう。

柳山

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