銀河系の世界
~巨大な星の海の片隅にある太陽系~
川柳の話題が続きましたので、この辺で目を宇宙に向けてみましょう。夜空を見上げると、星々は私たちのすぐ頭上に散らばっているように見えます。しかし、その一つひとつとの間には、人間の日常的な感覚では想像することさえ難しいほどの距離があります。そして、私たちの地球も太陽も、その巨大な星の集団「銀河系(天の川銀河)」の一員なのです。人間の暮らしを見つめる「小さな窓」から、今回はその窓を宇宙へ向けてみましょう。
■ 銀河系とは何か
銀河とは、膨大な数の恒星や惑星、ガス、塵などが重力によって集まった巨大な天体の集団です。私たちが暮らしている銀河は「天の川銀河(Milky Way Galaxy)」と呼ばれる。大きな円盤に腕が渦を巻くように広がった「棒渦巻銀河」で、直径はおよそ10万光年にも及びます。しかも、その中には推定1000億~4000億個もの恒星が存在すると考えられています。光が1年間に進む距離で、約9兆4600億キロメートル。つまり銀河系の端から端まで、秒速約30万キロという光でさえ、およそ10万年かかる計算になります。人間が生涯をかけても到底実感できない気の遠くなるような巨大な宇宙空間の銀河系の中で我々は暮らしているのです。。
■ 太陽系は銀河系のどこにあるのか
では、地球はこの巨大な銀河のどこにあるのでしょう。地球は太陽の周囲を回り、その太陽を中心として惑星、小惑星、彗星などから構成されるのが「太陽系」です。そして太陽系そのものが、銀河系の中に存在していて、「オリオン腕(オリオン・スパー)」と呼ばれる領域にあり、銀河中心から約2万6000光年離れています。太陽は地球や他の惑星を引き連れながら、時速約82万8000キロという猛烈な速度で銀河中心の周囲を回っています。それでも銀河があまりにも巨大なため、一周するには約2億3000万年を要します。恐竜が栄えていた時代から現在までを考えても、太陽系は銀河を一周していないことになります。
■ 銀河系の中心には何があるのか
さらに興味深いのが銀河系の中心です。そこには「いて座A(Sagittarius A)」と呼ばれる超大質量ブラックホールが存在しています。ブラックホールとは、非常に強い重力によって光さえ脱出することができない天体で、銀河の中心付近には大量の星が密集し、私たちの太陽系周辺とはまったく異なる激しい環境が広がっています。地球から約2万6000光年。私たちは銀河系の中心からかなり離れた、比較的静かな場所に暮らしていることになります。
■ 人類は銀河系をどう調べているのか
人類は、宇宙望遠鏡や観測衛星を使って、光、赤外線、電波、X線などさまざまな波長から銀河を観測しています。その代表的な計画の一つが、欧州宇宙機関ESAの宇宙望遠鏡「Gaia(ガイア)」です。Gaiaは2014年から2025年1月まで科学観測を続け、銀河系内外の約20億個の星や天体について3兆回以上の観測を行っています。星がどこにあり、どちらへ動き、どのような性質を持っているのか。その膨大なデータによって、人類は銀河系の立体的な「地図」を作ろうとしています。Gaia本体の科学観測は終了しましたが、その巨大な観測データの解析はこれからも続きます。次の大規模データ公開「Data Release 4」は2026年12月が予定されています。
■ 月、火星、そしてその先へ
一方、人類が実際に宇宙船や探査機を送り込める範囲では、月、火星、小惑星などの探査が進められています。NASAは「アルテミス計画」を進めていて、2026年4月には有人のアルテミスIIが月を周回し、将来の月面活動へ向けた計画が続いています。日本のJAXAも重要な役割を担っていて、「はやぶさ2」は小惑星リュウグウから試料を地球へ持ち帰った後も旅を続け、2026年7月には小惑星トリフネをフライバイ観測しました。さらに2031年には小惑星1998 KY26への到達を目指しています。またJAXAは、火星の衛星フォボスから試料を持ち帰ることを目指す「MMX(火星衛星探査計画)」も進めています。地球から月へ。月から火星へ。火星からさらに遠い太陽系へ。人類の活動範囲は、少しずつではあるが確実に広がっています。
■ それでも私たちは銀河系のほんの一角にいる
太陽系だけでも、人類にとっては気の遠くなるほど広大です。ところが、その太陽系は銀河系全体から見れば一点にも満たないほど小さい。そして銀河系さえ宇宙に存在する無数の銀河の一つにすぎない。私たちは、とてつもなく巨大な宇宙の片隅にある小さな惑星・地球で暮らしているのです。けれど、その小さな地球に生まれた人間が望遠鏡を作り、探査機を宇宙へ送り、銀河の構造を調べ、宇宙がどのように生まれたのかを考えています。人間そのものは小さい。しかし、「知りたい」と願う人間の好奇心は、宇宙の果てまで届こうとする力があります。夜空の天の川を見上げたとき、その光の帯の中に私たち自身もいます。地球も、太陽も、私たちは皆、銀河系という巨大な星の海を旅しているのです。銀河系の端から端まで光速で旅をしても10万年かかります。つまり人類が永遠に生存しつづけたとしても3400世代も命を繋いで初めて銀河系の直径を旅するほど巨大なのです。
柳山
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