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 前回からの続きのようになるが、看護師養成の教務事務を長く担当しながら印象深く記憶が残っていることがある。学生に対するいろいろな経済支援のことである。
 私立大学の医療系学部の学生納付金はかなり高い。文系学部の2倍以上になる大学もある。看護師になるためには専門学校で学んでも資格は全く変わらないのだが、専門学校の学納金だと私大の半分以下になる。
 経済支援としては、国が行っている様々な奨学金制度や教育ローンのほかに各大学が独自に貸与する奨学金制度もある。親の収入を考えると、学費や月々の仕送りを4年間やり繰りすることは難しいだろうと判断して、これらの制度に頼る入学生は多い。
 平成23年3月11日に東日本大震災が発生した。家屋が倒壊した、あるいは保護者を失った入学予定者に対して、国からの経済支援策が各大学へ緊急に通知された。被災によって入学が断念されるような事態を極力避けようとする措置である。これは翌年以降も継続された。
 その他に、民間の公益的な団体からの独自の支援制度の案内が私の勤務する大学にも届いた。人数の枠は1、2名と少ないが、給付型の奨学金で4年間の在学期間に適用される有り難い援助である。該当する学生に早速周知して申請の希望を募った。
 ある学生(女子)が学内の選考手続きを経て大学として推薦された。そして団体の審査をパスし、めでたく定額の奨学金が卒業まで給付されることになった。真面目な学生であり、喜ばしいことではあったが、毎年団体へ提出する調書や当人とのやりとりでいろいろと思うことがあった。
 調書には、家屋が全壊するという被災状況であること、保護者である父親はサラリーマンとして働き続けられていることなどが記載されていた。3人姉妹の長女であるが、家族の状況として、次女の妹が東京の私立大学の看護学部に入学する予定だとも付記されていた。これから2人分の学費と生活費を仕送りするとなるとかなり大変なのではないか。親として随分頑張っているなあと私は感心した。数年前に私自身も娘が大学を卒業していたが、在学中の仕送りは家計に重く響いていたことを思い出したのである。
 その後、学年が進行して4年生になる頃、最後の調書を提出することになった。その書類のやり取りで事務室に来てもらっていろいろ話しを聞いていると、三女の妹も東京の私大の看護学部を志望しているという。これにはさすがに驚いた。家を離れて暮らすとなると、生活費の仕送りは年間で最低1人00万円くらいは要するだろう。学費もそれと同じくらいは納めるはずだ。合計200万円、3人ならば600万円。仮に貸与型も含めた奨学金などの経済支援を複数受けたとしても、とても平均的なサラリーマンの家庭では賄いきれない額なのではないか。一体どんな経済状態なのだろう。添付された父親の所得証明書を見ても、どんな家計なのか読み取れなかった。私には謎だった。
 コロナ禍の時もいろいろな支援策が講じられたが、スマートに立ち回れた者も結構いたことだろう。不正を働いたものもいた。世の中はこんなものなのだろうか。焼け太りとまでは言いたくないが、大きな災難に遭った際の分かれ道みたいなものを感じたのである。

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