先日、いつものスーパーへ買い物に行き、用が済んで家に着いたら財布が無いことに気がついた。ウェストバッグに入れていたのだが、どこを捜しても見当たらない。レジで精算後、リュックサックへの詰め込み作業をした際にテーブルへ置き忘れたのかもしれない。そう思い返して慌ててスーパーへ戻った。
財布には現金の他にクレジットカードやSuicaなどが入っている。健康保険証も入れていたが、マイナカードに1本化されたのでマイナカードも財布に入れるようにするかと考えていたところだった。でも、マイナカードを入れた財布を紛失したら面倒なことになるからと、一応それは保留にしていた。
レジの女性店員さん(Aさんとする)に事情を話すと、何かの落とし物の連絡は今のところ入っていないという。念のために財布の落とし物を管理している女性店員(Bさんとする)にも訊いてみましょうということで呼び出してくれた。
Bさんに訳を話すと黒色の財布は保管しているが、私が使っているこげ茶色のものはないという。ガックリ。一応私の名前と携帯の番号を訊いてメモをとり、もし見つかったら連絡してくれるという。うーん、盗まれていたらどうしようもないが、カードを悪用されてヤバいことになったら大変だと、どんどん焦り出した。
帰り道で落としてしまったのか。それは考えにくいことではあるが、一応は数百メートルの距離を自転車で下を見ながら辿ってみた。うーん、ダメだった。何もなかった。
自宅に戻ってから、クレジット会社へとりあえず連絡しようかと考え始め、何気なく茶の間の畳へ目をやると黒のリュックサックの下から財布のこげ茶色が少し覗いていることを見つけた。その日は曇りで茶の間も薄暗かった。白内障気味ではっきりものが見えなくなっている所為もあるだろうが、全く気づけなかった。とにかく財布は無事に見つけることができた。わずか数十分程度の出来事だったが、血圧がやや高めな私には心臓によくない経験をしたようである。
それから数日後、再びスーパーへ出向いた際、店員のAさんがいつものようにレジに立っていたので、財布が見つかったことを早速話し、お騒がせしたことを詫びた。これで物事はすべて終わったかというと、一応その続きがある。
しばらくしてそのスーパーへ買い出しに行くと、商品陳列ケースのところでBさんにバッタリ逢って「お財布はどうなりましたか」と声をかけられた。見つかった旨を話して、改めて心配をおかけしたことをお詫びした。AさんからBさんへ私の財布が無事見つかった情報が伝わっていなかったようだった。そのことに私は何のこだわりもないが、Bさんが、私の財布のことがずっと気になっていたと話してくれたのを聞いて、何と心優しい方なのだろうと嬉しく感じたのである。いつもお客に対して、笑顔で分け隔てなく丁寧な応対をしてくれていることは承知していたが、改めてそう実感したのだった。
このスーパーは、そもそも個人経営の単一店舗で地元に根付いて半世紀以上続いていた。私が小さかった子供の頃、買い物かごを持った母親とよく出掛けたものだった。それから改装や近くへの移転を繰り返し、我が町のスーパーと言えばこの店の名前が一番に挙げられるくらい繁盛する存在になっていた。Bさんはそのスーパーの社長の奥さんだった。社長と一緒に毎日店に出てはレジ打ちや商品の陳列の業務を担っていた。その後競合する大手のスーパーが近くに開店し、次第にかつてほどの勢いがなくなっていった。
数年前に経営が行き詰まったようで、中堅のスーパーへ経営権を譲渡したらしい。店名も変わった。それでも社長でなくなった旦那さんと二人で店員として相変わらず働いていた。最近は旦那さんの顔を見なくなったが、Bさんの方はよく見かけていた。
今回の私の財布紛失騒ぎについて、優しく応対してくれたBさんには心から感謝している。と同時に、Bさんは本当にスーパーで働くことが好きなのだ、生きがいにしているかもしれないと勝手に私は思い込んでしまった。余計なことを言うようだが、Bさんには天職なのかもしれない。これからも長く頑張ってほしい。
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