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 30代半ばに健康診断で、バリウムを飲む胃の検査を初めて経験した。職場に大型バスみたいな車が来て、受診者を一人ずつ順番にその中へ入れて検査していく。私は何の予備知識もなく受診した。当時はインターネットもスマホも普及していなかった頃である。朝食抜きで来てくださいというのが唯一の事前準備だった。
 まず検査技師から、顆粒状のものを飲まされた。これが発泡剤であることなど全く知らなかった。口に含んで紙コップの水を飲む。げっぷしたくなるが堪えるよう指示される。これの意味(胃袋を膨らますため)が分からず、堪らなくなってあっさり何度もげっぷしてしまう。それでは検査にならないのでその度に発泡剤と水を飲まされる。ようやく言われた意図が理解できて、げっぷを何とか我慢することが出来た。
 次にバリウムを飲んで大きな俎板みたいなところで横になり、ぐるぐる回るよう指示される。この回り方の説明がなかなか分かりづらい。こちら側からぐるっと回ってください。反対に向こう側から回ってください。これがなかなかうまく理解できない。これもようやく分かったが、その頃には既に検査は終わっていた。
 検査が終われば、今度は飲んだバリウムを排泄しなければならない。これも高を括っていたら、翌日には固まってしまい便秘になって大いに苦しんだ。検査が終わったら速やかに水などをがぶがぶ飲んで、固まる前にバリウムを体からすべて排出しなければならなかったのだ。
 私のバリウム検査は1回で懲りてしまった。散々な目に遭ったのである。しかし数年も経てばほとぼりも冷める。40歳の節目に受診した人間ドックで再びバリウムを飲むことになった。前回の轍を踏まなければいいのだと、今度は自分なりに頭の中で前回の復習したのである。これがうまくいき、以後毎年受診する人間ドックでバリウムを飲み現在に至っている。
 さて私がバリウム検査を毎年受け始めた頃、70歳を過ぎた父親が町の健診で初めてバリウムを飲むことになった。私の失敗談を事前に話していろいろ助言してあげればよかったのだろうが、そうしなかった。そして私と同じような酷い目に遭ってしまったようだった。父親の方は、結論としてもう二度とバリウムは飲まないということになった。自分の親だというのに少し冷たかったかなと反省した。
 その頃の私が思ったのは、初めての人は事前の説明をきちんとしてくれれば検査はスムーズにいくのではないか、ということである。予備知識もなくその場でいきなりいろいろ指示されても、検査の緊張感もあるし頭の理解力は低下している。すぐには言われたことを吞み込めないのではないか。そして一度検査を受けてしまえば、もう二回目は説明不要。一回目の体験で誰でも大体のコツを覚えるのではないか。
 今のバリウム検査は事前に書類による説明と問診があって、それを踏まえて希望するかどうかを決めているようだ。前もって、これはどういう検査でどういうことが検査後に起きるのかをある程度学習させておかないと、1回でもうこりごりという私の父親みたいなケースが出てくる。そういったことは少なくともいくらか改善されているようだ。

  バリウムを飲めばごろごろ生コン車   博史

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