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 60歳を過ぎてからは5歳毎に老いていくと、ある時、年上の人から言われたことがあった。65歳、70歳、75歳、80歳と、段階を踏んで病気を抱え込んだり、怪我をしたりするということらしい。実際はそれらの節目で自分の身体に何かが突如現れる訳ではなかろう。自己認識としてどうしてもそのようにイメージして解釈したがるのではないか。加齢などともっもらしく言ったりするが、現実の老化現象は日常生活が積み重なって連続しながら進行していくものである。そして、ある日改めて老いを実感して衝撃を受ける。漫画家・イラストレーターのみうらじゅんさんが名付けた「老いるショック」というものである。
 仕事を辞めてやっと年金生活者になり、これから自由の身だ、さて何をやろうか、と改めて前を向き始めた時、自分の心身はこのままの健康状態がずっと今後も続くと思い込みたがる。しかし現実はそれほど甘くはない。これは大いなる勘違いである。精神的にも肉体的にも下降線を辿っていることはすべての高齢者に当てはまることだ。私も他人事ではない。体力が低下して、健康面でも少しずつガタが来始めている。こういったことを素直に受け入れて、5年、10年先のことを人生(余生の方が表現として適切か)設計として考えなければいけないと肝に銘じている。いつまでも若い気でいたいという変な幻想はとうに捨てている。自分より5歳、10歳年上の文芸仲間と付き合っているが、我が身も5年後、10年後はこのような人生の先輩たちと同じような足腰になるのか、こんな病気に罹るのかと想像することもある訳である。ちょくちょくお会いする丁度10歳年上の方がいるので、自分の10年後はこんな姿になるのかなぁと、密かに我が身を重ねて眺めている自分に気がつく。
 現在94歳になる老母との二人暮らしが6年になる。介護も受けず、通院もせず、薬も飲まず何とか他人の世話に頼らず生活している老母だが、確実に老いて心身の自由が利かなくなってきた。耳が遠くなる、足腰が弱くなる、記憶力が衰えてくる。これらは日々一緒に一つ屋根の下で暮らしていても実感してくる。数年前はこれほどまで耳は遠くはなかったとか、畳の上からの立ち上がり方がめっきりぎこちなくなっているとか、ある時ふと気がつくことがある。夏と冬が節目となっている印象を持っている。毎年夏を迎えると去年は何とか耐えられたこの暑さを乗り切れるだろか、冬が来るとこの寒さに耐えられて来年の春を迎えられればいいのだがとつい考えてしまう。1年前の体の動きを思い出しては夏に1歳、冬に1歳、合計1年に2歳、心身が衰えて年を取るように思えてくる。晩期に近づいた後期高齢者の老いのスピードを毎日観察している実感である。
 そういう私も、年に2歳とまではいかないが、若い時分と比べて1年に2割増しの1.2歳ぐらいずつ年を取っているようが気がしている。孫の成長ぶりをスマホやタブレットを通して眺めていると我が身を余計にそう感じてしまう。
 私は60歳で仕事を辞めたが、65歳、70歳と現役を続けている人の場合、リタイア後の残りの人生について、その時期が近づいた頃に期待感を持って夢を描くのはいいが、同時に自分の心身の衰えも併せて想像すべきではなかろうか。自分の健康に変な自信を持っていると、予期せぬところで病気になってしまった時、その精神的ダメージは大きいことだろう。
 相田みつをの言葉に「一生青春」というのがある。その心意気はいいが、私はそうはいかなくなってきた時のことをどうしても考えてしまう。心配性という性格もあるが、家族に迷惑をかけたくないという思いが強いからでもある。終活を早め早めに考える癖がついていることは確かである。(11月3日に母は死去。それ以前の執筆)

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  1. 佐野由利子 on 2022年11月7日 at 9:00 AM :

    お母さまの死去、寂しくなりましたね。お悔み申し上げます。

    年毎に(夏・冬)2歳ずつ歳取っていく・・・実感です。
     私も70の坂を登って、もうすぐ八十路です(-“-)
    今年はバイク事故を起こしてしまい、入院中に院内感染でコロナに!
    しっちゃかめっちゃかな年でした。
    記憶力減退・・・それでも川柳楽しんでいます。

    • 三上 博史 on 2022年11月8日 at 5:44 AM :

       由利子さん、バイク事故にコロナ感染と大変でしたね。お互い川柳だけはしがみついて頑張りましょう!

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