日中の暑さはまだまだ油断できませんが確実に秋が進んでいる実感がうれしい今日このごろです。先日は久しぶりに大阪梅田の繁華街へ出ることがあったのですが、地下街のお店などもすっかり秋色に染まっていました。
さて今回の句集のご紹介は石澤はる子さんです。
ーゆっくり遠くまでー
第一章「道のり」
生きるためヘンな飾りもつけている
プライドを通してくれぬ針の穴
花の咲く道を選んできたつもり
居酒屋で課外授業を受けている
水たまり海になろうとしてもがく
舞っている心のこりの花吹雪
諦めに至る道のりだとしても
第二章「陽だまり」
幻をこっそり食べてからの飢餓
鍵穴を覗いてからの不眠症
胸の底忘れたはずの鈴の音
おぼろ月何を告白されたいの
盃にたっぷり詰まる裏話
つり橋の途中で気づく蜃気楼
胸のうちさらせば雪は横なぐり
第三章「虹」
落ちるまで迷いつづけている椿
お日様に手が届くまで登る山
日に三度必ず笑う処方箋
まだひとつ秘密があって踊れない
渡らねばよかった橋がひとつある
いい風が笑い声するあたりから
シナリオの余白で淡い虹を見る
はる子さんも川柳文学コロキュウムの元メンバー。はる子さんの印象といえば、最初にお会いしたときから変わらないやわらかい笑顔でしょうか。いつも周りをなごやかな雰囲気にさせて下さるはる子さん、本句集のタイトル「ゆっくり遠くまで」は北野岸柳さんの教室に通っていた時に、岸柳さんが講義の最後に必ずおっしゃっていた言葉だそうです、皆様にもぜひお読みいただけるとうれしいです。
(写真は数日前、所用の帰りにバスの窓からふと見上げた空にかかっていた虹。下車してから急いでスマホ撮影したものですが間に合ってよかった!)