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 ある川柳仲間から聞いた話しである。その人が編集している柳誌で、某女流川柳作家がかなり前に詠んだ作品のうち特に気に入った数句を取り上げ、丁寧に鑑賞してその文章を載せて紹介した。しばらくして何かの用でその作家に会う機会があり、柳誌の鑑賞文を見せて話題にした。喜んでくれるかと思いきや、自作のどれについても全く記憶がないと宣わったそうである。
 その仲間は淡々とその顚末を話してくれたが、私にはちょっと信じられないという思いがした。私の川柳人生において、自作をお会いしたこともない人から褒められたり、お気に入りの句です、などと言われたりしたことは何度かある。もちろん素直に嬉しく感じる。ありがたく思う。仮にその作品が相当前に詠んだものだとしても、何とか思い出せる。仮に思い出せなくても、いかにも自分が詠みそうな作品だと改めて感じて懐かしむこともある。記憶をいくら呼び戻そうとしても思い起こせない、全く記憶がない、自作とは思えないというケースは多分なかっただろう。
 川柳を詠み始めて30年以上経つが、初心者の頃の拙い作品でもそれを載せた古い柳誌を捲れば、大体は記憶を呼び起こせる。若かったなぁと感じたり、少し恥ずかしく思ったりすることもある。
 自作について全く憶えていないというのは、何か悲しい話しである。きつい言い方をすれば少し無責任なのではないか。メタファーを多用した難解な心象句を量産しているようなタイプの作家にこういうケースが多いのではないか。いずれ生成AIが短詩型文芸でも活躍する時代になるかもしれない。そうなったらさらに無責任で安直な詠み方が蔓延るのだろうか? 考えただけでゾッとする。

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