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 落語に「けちくらべ」という演目がある。世の中にどれほどけちな人間がいるか、それを競い合う噺である。いろいろな題材を持ってきておもしろおかしく紹介するので、聴いた方は多いと思う。
 その中に扇子を使ったものが出てくる。こんなやりとりである。

「あなたの持っている扇子は、どのくらいの間お使いになっていますか?」
「10年は使っています」
「10年もですか? どんな具合にお使いなのですか?」
「半分開きまして初めの5年使います。それが駄目になったら残りの半分を開いて、これで5年使います」
「ふーん、でも扇子を半分しか開かないというのは不便ではないですか? あたしなら全部開いて使います」
「へえ、それじゃあ扇子の傷み方がひどくなるでしょう?」
「だから、開いた扇子を手に持って首の方を振るんです」

 当たり前のことだが、これでは風が起きようにない。そこがオチになっている。この噺を持ち出してきたのには訳がある。
 今年の夏は相当暑かったが、我が家は一応扇風機のお蔭でかなり助かった。何とか記録的な猛暑を凌げた。
 数年前に親戚から不要となった扇風機を1台譲り受けていた。大手家電メーカーのものだった。長く使用していた我が家の扇風機の首振り機能がダメになってしまい、今夏は早速この扇風機を持ち出して使い始めた。
 首振りやタイマーの機能の他に、ランダムというボタンが付いていた。風力をランダムで替えることが出来るらしい。でもそんな機能は私には関係ない。そんなことより首振りの範囲を調節できるようになっていた方がいい。一人暮らしなので、範囲は狭くていいと兼ねがね感じていたのだ。大家族で何人もが風に当たる必要があるなら風は広角で吹いた方がいいのだろうが、我が家は私一人。全然様子が違う。誰も当たらない風が吹く時間は無駄である。いろいろ調べてみると、首振りの範囲を調節できるような扇風機は製造されていないようだった。
 ある日、ふと気がついた。ランダムにして首振りを止めれば無駄がなくなる。やってみるとこのランダム機能は頼りになる。風力のメリハリが心地よい。日々ランダム機能にセットして扇風機を使うようになった。
 そんなこんなで、これは落語の「けちくらべ」に出てくる話と似ていなくもないなぁと、暑苦しい夜にふと思い出した次第なのである。

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