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 NHKの俳句番組は、司会進行役と選を担当する俳人、さらにいろいろな分野で活躍しているゲストの三者でいつも構成されている。ゲストは俳句を詠む方や詠まないが関心のある方のほかに、全くの素人も偶に出演する。
 この素人が入選作品について、ユニークな解釈を施して鑑賞する場合がある。五七五の流れの中で、その解釈はちょっと無理があるだろう、あまりにも突飛すぎるだろう、そう思われるような時でも、とにかく短詩型の世界なのだから、選者はそれを受け入れる。言下に否定してしまうような愛想のない発言はしない。画面を観ている私の方も、それなりの味わい方があるのだと一応は受け止める。
 何年か前に担当していた選者のコメントが気になった。入選作品に対するゲストの鑑賞の仕方が大変ユニークでなかなか思いつかないような深掘りした解釈を述べていた。うーんと思わず唸ってしまうようなものだった。そして選者は「深いですね」と付け加える。それ以上は突っ込まない。この「深いですね」のフレーズが別の作品の解釈でも繰り返される。もっと別の言い方があるのではないかと、突っ込みたくなってくる。知る人ぞ知る著名な俳人であり、斯界では重鎮として敬意が払われているのだろうが、ゲストの深読みする解釈に対して、それなりの意見や感想が吐き出されないのは、画面を観ていて何かもの足りなく感じた。そしてこのフレーズは別のゲストの時にも繰り返し使われていた。
 深読みするというのは、五七五に表れた言葉の語義や字義を超えてメタファー(隠喩)の角度から解釈を試みようとすることである。語義や字義にばかり拘っていては理屈っぽくて興趣が湧かない。言葉の水面下に何かが隠されているだろうと掘り下げていく。フロイトの精神分析学(名著「夢判断」の世界)にも通じるところがあるだろうか。
 メタファーという迷宮の世界に入り込むことは楽しい。占い師や予言者(両者とも私は信じていないが)だって、メタファーの濫用をして商売をしているようなものである。だから迷える仔羊たちは暗示されたものに対して簡単に引っ掛かって、とんでもない詐欺に遭ってしまう訳である。
 動物言語学という分野があって、イルカや小鳥などの鳴き声を言語やコミュニケーション能力として研究されている。いくら動物のそれらが知性的に凄いものであっても、さすがに比喩(修辞法)の手法、とりわけメタファーは用いられていないだろう。これを使いこなしているのは人間だけである。そして芸術や文芸の世界では、メタファーによって昇華された素晴らしい作品が生まれる。
 しかしメタファーは曲者でもある。一々深読み、深掘りしないといけない。そしてその解釈を理解するにも時間がかかる。先ほどの俳人のように「深いですね」としか言いようがない場合も起きる。もの足りなく感じてもそれは仕方がないのかもしれない。

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