わたしのドキュメンタリー好きについては、「ドキュメンタリー好き」(2022年1月27日)にいろいろ書いたが、最近も出色の作品に出遭った。NHKのEテレで毎週放映される「ドキュランドへようこそ」の中で、1月5日(金)と12日(金)、前編・後編の2回に分けて放映された「実録 マリウポリの20日間」がそれである。
「ドキュランドへようこそ」は海外の放送局が制作したものがほとんどであるが、結構眠くなるような内容のものが多い(一生懸命に番組を作って放送しているNHKの方にはごめんなさい)。放送時刻が夜11時からなので、私はほとんど予約録画して視聴している。番組自体が地味なので、録り溜めして暇な時間に観るのだが、タイトルを見て興味をそそられるような感じがしないものばかりだと溜まる一方となる。
この「実録 マリウポリの20日間」も実際に視聴したのは3月頃だった。ある日時間が余っていたので何気なく見始めると、いきなり釘付け状態。なにこれっ!という感じである。戦争勃発に係る同時進行ドキュメントである。圧倒的な迫力と緊迫感が途切れることなく続く。建物や道路が破壊され、子供を含めた死傷者の場面が次々と生々しく繰り出される。「同時進行」の凄さに比べて「同時代性」などという言葉が甘っちょろく感じられてくる。
NHKのホームページには以下のように記されている。
ロシアによるウクライナ侵攻直後にマリウポリに向かったAP通信取材班。市内に残った唯一のジャーナリストとして彼らが撮影した映像は、国際社会を揺り動かした。/前編
AP通信のウクライナ人記者M.チェルノフは侵攻開始を知り、マリウポリが狙われると直感。即座に仲間と現地に向かった。前編は、当初の混乱、そして猛烈な攻撃を受けながら徐々に街が包囲され、逃げ場を失い、物流も通信も遮断されて孤立していく中での市民の焦燥、そして重傷を負った人々が次々と運び込まれてくる病院の惨状を克明に記録。 原題:20DAYS IN MARIUPOL(ウクライナ/アメリカ 2023年)
2024年アカデミー賞(長編ドキュメンタリー)受賞作品 最大の激戦地マリウポリ。海外メディアが脱出する中、世界を揺り動かす映像を撮り続けたAP通信取材班。/後編
通信が困難になっても、マリウポリの惨状を編集部に送り続ける取材班。爆撃を受けた産科病棟では、赤ちゃんを抱いた母親が泣き叫び、腹部から出血している妊婦が運び出されていた。やがてロシア軍の戦車が市内に進攻。取材班はウクライナ軍の援護で脱出することになる。行くあてのない市民を残し、複雑な思いを胸に記者たちは銃撃の中を走った… 原題:20DAYS IN MARIUPOL(ウクライナ/アメリカ 2023年)
アメリカの「第96回アカデミー賞」で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したニュースを4月に知った時、「やっぱりな」というのが私の正直な感想だった。そしてこの映画が公開されて話題となる以前に、地味なテレビ番組で先取りして視聴できていたことを私は内心満足し誇りに思った。
番組の中で私個人が強く印象づけられたシーンは、進行が始まった2月24日当日、ロシアの侵攻に憤慨している中年女性に対するインタビューである。取材班の記者がマイクを向けていろいろなことを聞きながら、最後に名前を教えてほしいと言うと、そんな(名前を名乗る)ことをして何になると断った。取材班が翌日にもその女性に出遭うと、悲嘆にくれて避難所にいた。再度インタビューのマイクを向ける。今度は名前を答えてくれた。2日間での心境の劇的な変化。憤慨と悲嘆の二つの表情が忘れられない。これも戦争の凄さ、怖さなのである。
今振り返って思う。ドキュメンタリー映像に比べ、何億円もかけて制作したフィクション戦争映画の何と安っぽいことか。現実に戦争が勃発してからの同時進行ドキュメントなんて滅多なことでは観られない。今後は映画としての劇場公開になるだろう。テレビでの再放送があるかもしれない。とにかく観るべき作品である。
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